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内容説明
打倒財閥、既成政党、そして軍閥、宮廷官僚を一掃して、すべての国家機構が一つの党の指導下に置かれる独裁を目指した近衛新体制運動。憲法改正と解釈改憲で、党の指導者が天皇に対する唯一の輔弼者となる構想は、どのようにして生まれたのか。開戦前夜、近衛文麿を担いだ様々な「革新派」の行動と実態を明らかにする名著。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
23
大政翼賛会が成立するまでの経緯をまとめた一冊。教科書程度のことしか知らなかったので、どうして結成する流れになったのかが分かって興味深かった。1930年代でも日本はドイツやイタリア、ソ連のような独裁的に国力を結集できる体制が整備されていなかった。「革新派」とされる人々はそれを危惧し、政界のプリンス近衛文麿を担いで大政翼賛会運動を進めていく。近衛の煮え切らない動きや革新派以外の人々からの反発もあってなかなか進まない点が細かく説明されているところも良かった。戦時下での展開も含めてもっと知りたいと思いました。2021/09/19
ステビア
20
新体制運動とは中絶した一国一党運動だった、ということなのかな。近衛というのはずいぶん優柔不断な人だったようだ。2020/11/23
かんがく
12
革新-漸進/進歩-欧化の分類によってこの時代の思想が理解しやすい。革新を求めて行われた新体制運動が、漸進や復古の反対の中で中途半端なものになっていった経緯が参加者たちの日記などからわかる。独伊ソなどの「下」からの一国一党体制とは似ても似つかない、「上」からのグダグダ。2020/11/03
筑紫の國造
11
近衛新体制研究の古典的名著として知られる、『近衛新体制』の新装版。いわゆる「新体制運動」の担い手として「復古–革新」主義者たちの存在を定義し、どんな人物がどのような構想で運動を進め、どのような問題点があったのかを明らかにする。「あとがき」にあるように、そもそも研究の蓄積や史料の少ない時代に始めたことからまずは史料集め、関係者の聞き取りから始めたという、まさしく先駆的研究と言えるだろう。以後の新体制研究は、多かれ少なかれ本書の影響を受けているのではないだろうか。この時代を研究するのに、まずは読むべき名著。2022/11/11
ムカルナス
11
ワシントン体制への不満、持たざる国家の苦悩により日本は資本主義ではなく統制経済の社会主義体制を強力な政治指導で推進して国力を増強し、帝国主義国家(=米英)を打倒して国家の生き残りを図ろうとする。現代から見ると特殊な人々の虚妄に思えるが、当時は米英の国力を実感でき、戦争することの愚がわかる人のほうが稀で、インテリ青年、革新的な軍部、新官僚etc皆が大政翼賛会に賛同した。そういう人々の多くが戦後左翼になる。戦後の話は本書にはないが、世界の現実を見ようとしない独りよがり左翼体質が引き継がれているようで興味深い。2018/03/11