内容説明
楽しい渓流釣りは、一瞬で悪夢に変わった。釣り糸の先にあらわれたのは、思わず悲鳴を飲み込むほどの「怒れる魚」の顔だった。釣り上げられたそのヤマメは大口をあけ、いきなり指に噛みついた。魚が人間に襲いかかるなどという話は、ほら話にしても聞いたことがない。しかし、それだけではなかった。雄猫三匹が幼女を襲い、飼い犬が鰻に絞め殺された。スズメバチは人間を攻撃し肉を喰い、一日のうちに骨だけにした。生きものはすべて、虫ケラから人間にいたるまで、染色体の異常で巨大化し狂暴になっていった――。この不気味な変動の陰で、何かが静かに起こりつつあった。恐怖の時代の前兆を描いた表題作のほか、読者を荒涼たる混乱の世界におとしいれる全6編。書き下ろし解説を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aki
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暴力的な作品が目立つのは当時の小松が何か(誰か)に猛烈に腹を立てていたからか。独立した作品を集めた中短篇集としても読めるが、実験的な作品「BS6005に何が起こったか」を軸に置くと、「はたされぬ怨恨や得体の知れぬ呪い」(114頁)をテーマにした連作長編のように見えなくもない。歴史はルサンチマン(怨念)がつくるってね。BS6005の記憶データのうち、比較的完全に近いデータが「毒蛇」「牙の時代」「サマジイ革命」、「BS6005」「ト・ディオティ」「小説を書くという事は」は断片的なパターンと理解できる。2014/10/11
Naom
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いやー、わからない(;´Д`)2013/08/08
斉藤赤根
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小松左京という人の味がよく出てる本だなぁと思った。敗戦でそれまでの価値観が一度崩壊したところから始まり、戦後のまったく違う社会を生きてきた人が持つ視点というか。 この人は自他共に滅ぼしかねない過激さを抱えていて、その過激さを「建設的」にシフトさせるために憧れに満ちた未来を描いていたのではないだろうか。穏やかに退化していく未来など許せない、あってたまるか、みたいな。 あと解説で三島由紀夫が「『日本アパッチ族』なんて書きやがって、俺あいつのファンだったのに」と言ってたと書いてて笑う。あんなに面白い小説なのにw2013/07/22
1977年から
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1978年