集英社文庫<br> あやかし草子

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集英社文庫
あやかし草子

  • 著者名:千早茜【著】
  • 価格 ¥528(本体¥480)
  • 集英社(2015/08発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784087452495

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内容説明

古い都の南、朽ちた楼門の袂で、男は笛を吹いていた。笛を吹いてさえいれば、男は幸せだった。ある春の夜、笛を吹く男の前に、黒い大きな影が立っていた。鬼だ。笛の音を気に入った鬼は、男に絶世の美女を与え、百日の間は絶対に触れてはならぬと告げるが……(「鬼の笛」)。人ならざるものを描くことで浮き上がる、人間の業や感情。民話や伝承をベースに紡がれた六編を収録した短編集。

目次

鬼の笛
ムジナ和尚
天つ姫
真向きの龍
青竹に庵る
機尋

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おしゃべりメガネ

211
ホラーテイストで展開しながらも、しっかりと「愛」をテーマに書き綴る千早さん、本作もさすがでした。しかし、本音はやはり千早さんには現代の歪んだ「愛」を書いた作品をもっと書いてほしいかなと。恒川さんレベルに文章が洗練され、あまりにもキレイすぎて‘流れ’すぎてしまいます。本作は「あやかし」な生き物(もののけ)がそれぞれ登場し、あらゆる愛情を幻想的に表現します。純愛ファンタジーとでもいうべき作品でしょうか。個人的には『ムジナ和尚』がとても印象的でした。決して深すぎずも浅くはなく、まさしく「文学」の世界です。2014/11/28

新地学@児童書病発動中

128
異形の者たちを切なく、美しく描く短編集。泉鏡花を思わせるところがあり、非常に好みだった。読みながら、こういう物語が読みたかったんだよ、と何度も思った。泉鏡花と異なる点もあって、それはどの登場人物たちが孤独を感じている点だと思う。その点が現代的だし、哀切な情感を生み出している。例えば、「天つ姫」のヒロインは気丈な性格の故、人間社会では浮いた存在で、天狗と心を通い合わせる。「機尋」が私のベスト。泉鏡花の世界に一番近い幻想文学の傑作。夕焼けと白繭の色の対照が絶妙。機を織る行為は物語を作る行為に近いのだ。2017/06/25

ゴンゾウ@新潮部

107
人と人ならざるあやかし達との交わりを描いた短編集。鬼、天狗、ムジナ、龍、幽霊、座敷童と様々なあやかしが登場する。何故か恐怖心は全く感じない。むしろ懐かしい心地良さが漂っている。人との交わりであやかし達がより人間らしく思えて来る。【ナツイチ 2017】2018/04/25

扉のこちら側

106
2018年174冊め。遠野物語のような、どこか懐かしいあやかしと人間との交わり。著者の作品を読むのは『魚神』に続いて2作目になるが、魚神ほど毒はなく、民話の趣がある。古ムジナが涙を理解する話が印象的。2018/06/07

(C17H26O4)

91
人の世はこわいよ。だから鬼やムジナであるのがよいかもしれない。あやかしでありたいかもしれない。あやかしは、ただただ純粋であるだろう。惑わされるのは人間の方が常かもしれないが、でも、たまさかに、人間の情に触れて惑わされるあやかしでありたいかもしれない。それか、やはり、女のままでありたいかもしれない。鏡の中を毎日覗き、現し世ではない、こことは違うあちら側を毎日見つめる女で。いいえわたくしは見ませんよ、蛇もこの姿も仮の姿です、という女で。2020/06/07

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