内容説明
北杜夫 珠玉の初期作品をカップリング。
病弱な少年の病気への密かな親しみや、発熱によって開かれる想像力の世界を描く「病気についての童話」。
牧神がまどろみから目覚め、パンの笛とアポロン の竪琴による音楽勝負に挑む、詩的世界を描く「牧神の午後」。
精神を病んでいく主人公がある日知った、『狂詩』という言葉の意味と、心理の変換を描く「狂詩」。
少年の無垢な純真性喪失を瑞々しく描く「少年」。
北杜夫初期の繊細な世界が、7篇の小編を通じて拡がっていく珠玉のカップリング集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
14
小学館のP+Dブックスシリーズの1巻です。このシリーズの理念→入手困難な本を本とデジタルで同一価格(550円プラス税)で販売、配信する。は、素晴らしいと思います。北杜夫さんの初期短編集のカップリング。生きていくことと性の目覚めについて、女性側から書いた『パンドラの匣』男性側から書いた『少年』が特に印象に残りました。半自叙伝とも取れる『狂詩』も精神病院の患者の実習や昆虫採集など友達が少なく内にこもりがちな作者の幼年期からの精神が垣間見れて興味深かったです。 2023/06/19
もだんたいむす
5
初めて読んだ作者の作品ですが、綺麗な文章だなと思いました。ギリシャ神話を題材にした話と、医者が主人公の話がほとんどでした。なんともいえない雰囲気が漂う作品。★★★★☆2015/10/11
nightU。U*)。o○O
2
文章も題材も古めかしい近代的な神経衰弱的なものだが、目のつけどころにただならない詩的な配合があり、美しくもあればグロテスクでもある。ユーモラスなところは暗く自己完結的で深みがあるとは言えないが、逆にそこが魅力だと思う。簡単に読めるがちょっととらえどころがなく、本当に大丈夫かよという感じ。ギリシャ神話に救いを求めているのかと思うが、それがいっそう周辺のせせこましさを強めたのではないだろうか。2016/09/19