集英社文芸単行本<br> 人間のしわざ

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集英社文芸単行本
人間のしわざ

  • 著者名:青来有一【著】
  • 価格 ¥1,320(本体¥1,200)
  • 集英社(2015/07発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784087716016

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内容説明

この世界のどこに救いや癒しがあるのか――戦後70年に問いかける衝撃作。男は戦場カメラマン。紛争を追いかけて世界中を駆け回り何十年も家庭を顧みず、結果、妻の死を知ったのは葬儀が執り行われた後だった。今は、テロリストとの関係が疑わしい引きこもりの息子と暮らし、妻の裏切りの記憶に苦しんでいる。かつて、互いに惹かれあいながら結ばれなかった女との逢引先で男が語り始めたのは、青春の日々に長崎の町で掘り出された喉仏の骨、黒こげの殉教者の慟哭、そして30年前の雪の日の、爆心地での教皇の祈りだった――。デビュー20年。『聖水』『爆心』に続き新たに殺戮と紛争の世紀を問う衝撃作。長崎という土地の記憶を探り続けてきた著者の、到達点であり出発点がここに。【目次】人間のしわざ/神のみわざ

目次

人間のしわざ
神のみわざ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤枝梅安

58
粘着質の文体で、読み進めるのに苦痛を伴った。読者に苦痛を強いることで、描かれている内容を読者に疑似体験させようとするのは、作家の手法として珍しいことではない。「人間のしわざ」は、精神分裂的なモノローグと会話と情交シーンが交錯し、読者を混乱に陥れる。筆者が目指すのは映像表現を超える文章表現なのであろう。狭い空間の中で人間の精神が明滅し、拡大し、崩壊し、粉砕していく様を描く。「戦争は人間のしわざ」なのである。「神のみわざ」は人知を超えたところにある。それを問わずに信じるのが「信仰」なのであろう。2015/07/31

detu

39
信仰、恋愛、家族、仕事、戦争など一人のカメラマンの苦悩と経験が、時系列距離感を無視して語られている。突拍子もない描写なのですが、違和感も感じないそんな作品と思った。わずかな金のために戦場カメラマンとなり、現実を目の当たりにして「戦争は人間のしわざです」若き日に見たヨハネパウロ2世の言葉を追い求め彷徨い続ける。ストーリー性は薄く延々と苦悩と過去と現実がループする。遠くは長崎、島原の乱、ボスニア紛争、9.11、東北震災、原発事故、共産主義崩壊、てんこ盛りだ。重たいといえば重たい。純文学だねこりゃ。図書館本。2016/02/05

おさむ

36
人間の抱える愛と憎しみ、狂気。それらが剥き出しになるのが戦争という「人間のしわざ」。被爆地で、隠れキリシタンの歴史をもつナガサキという土地に染み着く陰影を感じさせる作風は初でしたが、印象的です。改行がないのに読みやすい文体は故・野坂昭如さんを彷彿させますね。2016/01/06

竹園和明

20
装丁を飾る関根正二の『信仰の悲しみ』がただならぬ雰囲気を醸し出す。被爆地長崎とヨハネパウロ二世の言葉が物語の核を成すが、観念的な文章のため「戦争は非」というテーマを基にした上で何を語っているのかを紐解くような読み方を強いられる。「戦争は人間のしわざ。信仰は神のみわざ」か。…戦場カメラマンの主人公は仕事と我が子の言動に悩み苦しみ、30年振りに再会した恋人との逢瀬でも心の闇を振り払わんばかりの激烈な対応をする。生きる事が信仰と隣り合わせであるならば、装丁の絵は何を暗示しているのか。暗澹たる気持ちにさせられた。2016/01/01

Yui.M

14
読みながら、今の私たちはあまりに平和すぎて、豊かすぎて、「戦争」というものに対してボケてしまっていたのではないかという気がしてきた。「戦争」は、ずっと昔からいつもすぐそばにあって、反対だなんだと声をあげるだけではいけなかった。もっと真剣におそれるべきだった、怠らず対策をこうじてこなければならなかったのに、戦後、仮の平和、嘘物の平和に身をゆだねてぬくぬくと生き続けてきてしまったのではないか。と、とてもこわくなった。2017/09/14

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