- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
近代合理主義を育み、世界に議会制民主主義などのお手本を示したイギリス人がなぜ、世襲制の君主制を支持するのかという「エニグマ(謎)」を読み解き、イギリスという国家、社会像を描き出す。グローバリゼーションの最先端を行くイギリスは、いかにして国家としてのアイデンティティを維持しているのか。(講談社現代新書)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
62
王室、王室と政治の関係、階級社会、スコットランドやEU問題と、長年イギリスが抱えてきた問題の「いま」が見える。確かに日本人の感覚ではわかりにくいポイントを説明してあって興味深く読めた。歴史を重んじながらも同時に世界最先端の要素も持ち合わせる。その両方の融合が魅力的かつふしぎに見えるのだろう。2016/08/12
mazda
25
イギリス王室は、1066年フランスノルマン人による征服により即位したウィリアム1世から始まります。いわゆるアングロサクソンというのも、現在のドイツから移ってきた人たちです。イギリス王室は基本的には政治に介入しないとなっているようですが、実際は王室が介入することもあるようです。統帥権は国王が持っているし、クラウンステートとして1兆円を超える資産があるしで、その優遇ぶりがうかがえます。階級社会のあるイギリスでは、王室という名の貴族が今でも存在しているということでしょうか。2017/09/08
masabi
18
合理的な国イギリスでなぜ世襲制王室が存続するのか。その答えの一端はグローバリズムにより従来の国家・アイデンティティが揺らぐなかで女王を戴く国家連邦、女王に忠誠を誓う臣下として国民統合の機能を果たす。多文化主義、開かれた社会を標榜するイギリスにおいて人種や地域に根差したアイデンティティではなく女王への忠誠の形を取る。また王室は国民の望む幸せを反映する幸福産業でもある。王室のもたらす経済効果もバカにできない。2015/06/13
ちくわん
10
イギリスについてのあれこれ。憲法が成文化されていない。週一回、女王陛下と首相が二人っきりで意見交換。「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」なのに「イギリス」なのか。イギリス王室の成り立ちは。スエズ動乱やイラク戦争。政治・経済・文化・民族などあらゆる観点から「イギリス」を解説している。小学校にはすでに「イギリス」は習っていたのに、これほどまでに「イギリス」を知らないとは思わなかった。日本との相似性も興味があるので、再読したい本、作者、テーマである。2018/08/05
hanagon44
10
イギリスかぶれやイギリス大好き人間でなくても,どこか惹かれてしまう国。国力が衰えようとも,歴史の試練を経て蓄積してきた外交の知恵を駆使して"KEEP CALM AND CARRY ON(静かに,前に進め)"で乗り越えてきた国の奥深さと底力を感じ取れる本でした。「国家,社会とは,そこに住む人々の想像力の産物であるということを,イギリス立憲君主制の強靭さは示している」という一文が印象的。「地方分権と欧州統合の深化,移民の大量流入により,アイデンティティが揺ら」いでいるイギリスの今,これからも目が離せません。2016/05/01