内容説明
男5人女1人、中学生から30歳までの6人きょうだいが暮らす藤川家。ある日、母親を亡くした少女・十遠が連れてこられる。異母妹だという健気で可愛らしい十遠を、唯一の同性である七重だけが受け入れられず……。一方、長兄の四寿雄が営む「遺言代行業」には奇妙な依頼ばかりが舞い込む。なし崩しに仕事を手伝っている弟妹たちだが、難題揃いで……? 人の「絆」を描く、ハートフルコメディ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
71
初読。2015年802冊め。S黄尾シリーズの響野さんということで期待して読んだ。S黄尾が「高校の保健室を根城にした兼業ギャングな探偵団」だったのに対し、「兼業ギャングとブラックな面」を除いて家族物にした感じ。冒頭の人物紹介では長男なのに「4」からスタートで混乱してしまったが、その後はキャラの魅力溢れてどんどん読める。しかし登場人物が多い故に会話中心になるのでどうしてもラノベ色が強くなる。謎解き要素もしっかり書ける著者なので今後に期待。2015/07/13
dr2006
48
ハートフルな家族ものを想像させる装丁だが、昨今の世相や複雑な家族関係、同属嫌悪や毒に愛が混ざっているような会話が随所にあり、決して美談に終らない。苦い題材にも人物造形は明快で、各々の性格の分かりやすい会話とト書き的な行間描写によって、そのままドラマの脚本になりそうな勢いがある。遺言を死後に叶えるという「遺言代行」という生業は人の機微を扱う点で興味深く、法的には疑問だが現実的にあってもおかしくない。2015/04/04
はつばあば
44
なんとまぁ、複雑な異母兄弟だけで暮らす家なんだけど温もりがある。ハートフルコメディとは書いてあるが結構シリアス。深い繋がりのある家族故に問題も多い。他人であれば赦しもできようが親子の関係は、子が親の年齢に達しない限り分り会えないものかもしれない。それにしてもここの長男、30にしてこれだけ出来た人間が育つのはやはり承子さんの育て方が良かったのだろう。遺言で残すのはお金だけでは無いと、今日は2冊の本から教えられた。感謝の気持ちを綴る遺言状を私もそろそろしたためる頃合い・・続きを読んでからでも遅くは無いだろう2015/06/28
りゅう☆
42
遺言代行業を営む長男四寿雄、次男弁護士五武、引きこもり浪人生六郎、唯一女性の七重は八重、九重と三つ子の藤川家の元に十遠がやってくる。意味不明な内容の遺言が多く、昔好きだった人に思いを伝えたり、若くして亡くなった先輩の妻の不審な行動、猫探しから見えてくる十遠の学校生活、ホームレスとブイヤベースの関係など兄妹力を合わせて任務遂行していく様子に謎解きの面白さや、笑いあり人情味ありな兄妹愛に安定感がある。全体的に浅く大袈裟な点は否めないけど。十遠って最初から怪しかったけど、最後にはめでたし、めでたしではないかな?2016/01/19
あむぴの
39
【ナツイチ2015集英社文庫】36冊目。家族の話だった。「遺言代行」の方がメインかと思ってた。遺言代行の上でのミステリーを楽しみにしていたが、遺言に驚くほどの大きな謎はなく、複雑な兄弟の話だった。十遠の言動に、トゲがささったみたいな、違和感を感じた。イラッとして、途中で読むのをやめようかと一瞬考えた。最後まで読んでみて、十遠には、彼女なりの、七重には彼女なりの主張があることが判明。こんがらがっていた糸がほどけたようで、うむ、まあ、最後は丸く収まった感じだ。2013年12月。★★★☆☆2016/05/02