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内容説明
焼け野原となった戦後の東京で裸一貫から貸金業を立ち上げ、一代で銀行を築くが、バブルに まれ経営破綻。見せかけ増資の疑いで逮捕、百十日間にわたって勾留される。欲望と打算が渦巻き魑魅魍魎が跋扈する世界を生きた男が、東京拘置所の狭い房で人生を振り返る。無学・無一文から成り上がった金融界の風雲児、不屈の精神をここに記す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
18
著者は身一つの復員兵から貸金業で成り上がり、銀行まで築き上げるもバブルで経営破綻、見せかけ増資で逮捕された。本書はその110日間の勾留日記。彼を支えてきたのは戦争の激烈な体験であり、戦争に鍛えられた人間観察力だ。人間は動物であり、生身の経験は理屈に勝ると再認識させられる。しかし皮肉にも、経験の重さを思い知る事が経験の牢獄を脱する第一歩にもなる。人は簡単には達観などさせてもらえないのだ。78才の著者も強気な外面と内心の不安の間で惑う。文学者などでなく、こんなタフな人が書いてこそのリアリティがある2016/05/25
うたまる
4
バブルで破綻した東京相和銀行の会長、長田庄一の拘置所日記。本書は彼が罪に問われた見せかけ増資の核心に迫るものではない。一代でトップクラスの第二地銀を育て上げた男の心胆とアクを味わう本だ。当然”読まれる”ということを意識したであろう述懐は、二重三重の底意が込められていると思った方がよい。少年時代のエピソードは無垢な被害者像を印象付け、出征のそれは不屈の精神のアピールか。各国要人との交遊や政治家へのお年玉はさり気ない恫喝に違いない。そして「半世紀間、何の間違いも犯さず銀行を経営し」こそ狸親父渾身の腹芸だろう。2020/08/05
Yasutaka Nishimoto
4
バブルで破綻した東京相互銀行。その破綻時の犯行として東京拘置所に留置された著者。一大で銀行を築き上げ、執行猶予で幕を閉じるまでの日記。2019/12/20
Yunemo
4
いろいろ毀誉褒貶言われた人物ですが、腹が据わった人生観を持ってたことがよく解ります。記された何気ない一言一言に、生きた証が垣間見えます。78歳にして、この感覚には正直驚かされます。なかなか味わえない感覚がここにあります。政財官との豊富な交友に裏付けられた部分もあるのでしょう。ただこの時代に、バンカーとしての評価はどうだったのでしょう、という素朴な疑問も。故山田智彦氏、銀行小説の初期にして第一人者、長田氏との深い関係が読み取れました。ある意味裏付けのあった組み立て小説だったのでしょう。懐かしい想い。2014/12/26
April
2
著者のそれまでのすさまじい人生の一端を垣間見る一方、拘置所に拘留された110日間あまりの状況について克明に語られている。検事との壮絶なやりとりからわかるの取り締まりのあり方や、拘留されることによる身体的、精神的変化を述べているのは興味深い。人生を振り返るさま、決して認めないという不屈の精神が伝わってくる。2016/02/10