内容説明
2014年松本清張賞受賞作
誰よりも戦闘機を知る著者が描く、理系ミステリーの決定版!
自衛隊戦闘機「TF-1」が、スクランブル飛行中に墜落した。この異様な事故を受け、防衛省は機体を製造する浜松の航空機メーカー、四星工業にその検証を依頼する。四星工業では入社三年目の技術者、沢本由佳が上司の永田とともに業務にあたっていた。シミュレーションの結果、事故はパイロットの単純な誤操作によるものだと判断されたが、永田は沢本が言った何気ない一言が気になり、すでに会社を辞めてデザイナーをしている同期の倉崎に話を持ちかける。スクランブル発進した自衛隊機は、なぜ不可解な事故を起こしたのか?背後に浮かび上がるのは、「TF-1」設計時に官(防衛省)と民(航空機メーカー)がそれぞれ抱え込んでいた闇だった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
145
航空機開発の過程で隠蔽されたリコール隠しのようなものが発覚し、その弱点を突いたかのような事件が起き、開発技術者が真相を追う話。航空機業界の蘊蓄、開発業者と防衛相の関係、様々な話題が語られる。架空の航空機の話で説明が丁寧なので話についていきやすい。オタクが知識披露をはじめると収集つかなくなることも多いが、本書に限ってその心配はない。とにかく業界の様子が分かって、読んでいてとても楽しい。犯人が意外な人ではないのでミステリとしての楽しみはないし、恋愛要素も余計な気はするが。面白かった。2022/12/31
それいゆ
63
松本清張賞というのはこの程度のレベルなんでしょうか?自衛隊航空機の描写も詳しくて話は面白いのですが、戦闘機の解説書を読んでいるような感じもしました。一番興ざめしたのは、すぐにベッドのシーンが登場することです。その部分だけ何か安物の作文を読まされているようで、不自然でした。この作品には恋愛なんかいりません。2014/07/10
Hitoshi Mita
54
思ったほど陰謀も薄かった。ストーリー的には恋愛物かな(笑)飛行機知らなくてもある程度は分かる気がするし、それほど重くないので気楽に読めました。何度か米軍のお祭りで横田基地に行ったりしてたので、戦闘機のイメージはわかってたので、なるほどね〜と思いながら読ませていただきました。先日、ニュースで日本初のステルス戦闘機の開発記事を読んだばかりなので、実際こういうことがあったらたまらんなぁと思いましたね。戦闘機落ちたら多額の税金が失われるって事ですから。続編出てるらしいのでそちらも読んでみます。、2016/02/22
p.ntsk
51
謎の侵入機にスクランブルした航空自衛隊機が立て続けに事故をおこす。事故の真相究明の過程で浮かび上がる人物とTF-1開発に纏わる官民の思惑によって隠蔽された事実。作者がメーカーで航空機の設計に携わっていたというだけに細部の描写はマニアックでリアルな感じです。ただ物語としては個人的にはもう少し話の広がりや奥行きが欲しかった気がします。航空機ファンの方にはお勧めかもです。2014/10/13
舟江
41
友人から頂いた本。航空ミステリーだという。随所に犯行者の独白があり、55年程前のスタイルを彷彿させた。また技術者がこんな本を書いたことが、もっとミステリーであった。2016/10/26