内容説明
誰一人として、勝利くんを罰しようとしなかった。その結果、彼はあそこまで追い詰められたんです――中沢の言葉を反芻しながら、風見鶏のマスターは、自分がかれんの兄であることを花村家に告げに行く。由里子さん、若菜ちゃんもそれぞれのつらい経験を乗り越えようと、一歩ずつ足を前に進める。あのとき以来、時間がとまったままの勝利だったが、急遽オーストラリアから帰国することになり……。
目次
Time and Tide
Patience
最初のあとがき
文庫版あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おくちゃん🌸柳緑花紅
92
同じ経験をしたことがないと、本当に相手の気持ちは分からないし軽々しい言葉も吐けない。悪意がなくても償いきれない過ちを犯したとき・・・自分の大切な人がそのことで苦しんでいるとき・・・ただ一つだけ会いたいのに会えない、勇気を出してやっと言えた言葉に望んだ言葉を貰えなかった経験ならばある。だからショ-リが帰って来てくれた時にカレンがゴウゴウと泣いたとき私も一緒にゴウゴウと泣いた。それぞれが決意の朝を迎えるのも、もうすぐ。早く読みたいような、シリーズが終わってしまうのが淋しいような、そんな気分。2014/06/28
☆ゆう☆
87
人を赦すとは何だろう。何をもって赦されたということになるのだろう。どこかで各々が折り合いを付けなければならないことだけど難しい。遂に勝利が帰ってきて、かれんと再会。「逢いたいって言ってくれなかった」かれんの心細くて不安でたまらなかった気持ちがすごく伝わってきた。本当に想い合ってる二人って、離れている時間があっても顔を見たら、いままで一人で悶々と抱えていたものも不安だった気持ちも一気に溶けて心の隙間を埋めることができてしまう。それこそ全てを赦せてしまうのだ。愛も赦しも理屈じゃない。二人のゆく末を見届けたい。2014/06/26
まさきち
80
毎度のことながら遅々として進まぬ展開にやきもきしながらも結末が気になって一気読みしてしまった一冊です。ともあれ終盤でやっと帰国した勝利に安堵をし、ラストで名前を呼んでもらえたらかれんに喜びを感じて思わず涙です!2014/06/28
扉のこちら側
77
2014年1146冊め。単行本で初読、文庫で再読。勝利の帰国が自分で選択したのではないところがもやもやする。2014/12/17
だまだまこ
56
おいコー再読、18冊目。今回はマスター、由里子さんの生の声が聞ける。一番の当事者である由里子さんは、外から見ていると強くて優しいようだけど、決してそうではなかったということ、弱っていたからこそ勝利を責めることができなかったことがひしひしと伝わってくる。哀しくもあり、そこから立ち直ろうとする彼女の強さにエネルギーをもらう。そして最後は勝利の帰国へ。これを読んでから6年、勝利と一緒に地図のない旅をしながらずっと待っていた結末。新刊発売まであと1週間。全部読み返して準備万端で手元に届くのを待つばかり。2020/06/12