内容説明
外界から孤立した「霧越邸」で続発する第二、第三の殺人…。執拗な“見立て”の意味は? 真犯人は? 動機は? すべてを包み込む“館の意志”とは? 緻密な推理と思索の果てに、驚愕の真相が待ち受ける!
※本書は一九九五年二月刊行の新潮文庫版を全面的に改訂した〈完全改訂版〉が底本です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナルピーチ
198
『幻想的な世界観とミステリの融合』本作にピッタリな表現だ。北原白秋の詩に沿って起きる連続見立て殺人、そして解決編に入ってからの展開力には終始圧倒されっぱなしだった。この人の描く本格ミステリの魅力に取り込まれてしまっている。そして僕は今、観客席から舞台を眺めている。舞台上には劇団員達が一列に並び、観客席に向けて満面の笑みを浮かべている。上から降りてくる幕が終演を告げる。鳴り止むことのない盛大なる拍手喝采とともに。もちろんこの脚本及び演出家の名は“綾辻行人”である!2020/12/06
しんたろー
175
下巻に入り加速度的に事件が進む…「これでこそ、雪に閉ざされた館!」というワクワク感で読めた。本格ミステリに怪奇&幻想要素が加わっているので、妖しい映像が目に浮かぶ…これを好きか嫌いかで評価が分かれるところだろうが、私としては充分楽しめた。犯人の「美しい瞬間を選んで摘み取ってやる」という独裁的な動機も、丁寧に人物描写を重ねているので納得できるが、目星もついてしまう両刃の剣。残念なのは、薀蓄が多い割に、隠れていた人物についての背景や心情が少ししか書かれていない点。それでも長編を飽きずに読ませる力量には感服。2018/03/13
まりも
138
外界と遮断されてしまった吹雪の山荘を舞台にした物語の後編。白秋の「雨」に見立てた殺人事件の犯人が明らかになる話。おぉ、これはニクい演出ですね。正直トリックや動機に関しては全く分かりませんでしたが、物語に散りばめられた暗号で犯人が誰なのか気付くことが出来ました。どこか幻想的な雰囲気を残しながら、シンプルなミステリーとして物語を進行させていく。この技術力と演出の巧みさは流石というか、ただただ感心させられました。霧越邸という舞台に相応しい読後感の残る素晴らしい名作やね。積みっぱなしの館シリーズも読まないとだ。2016/08/03
おかむー
127
納得の本格ミステリ幻想風です。『もうすこしです』。巻末のインタビューでの説明を俺流翻訳すると「ミステリの偶然や道具立てのできすぎ感を超常的な要素で補完してしまうというある意味力技」ということかな?まぁそれをもってしても、下巻になって突然その激さを発揮する鈴藤の深月への想いとか、真犯人のどっかで見たような「ボクチンの美学は世界一ィィィィ、凡俗には理解できなィィィ!」ノリ、全くではないにせよ唐突に捩じ込まれた感の探偵役なんかは少々興ざめ。とはいえミステリの仕掛けと重厚な描写はさすがの綾辻作品でしたとさ。2014/04/30
ちーたん
106
★★★★☆雪山の閉ざされた洋館『霧越邸』で起きた第一の殺人。北原白秋『雨』の歌詞をなぞる犯行は第二、第三と連続見立て殺人へ!無関係と思われた館の関係者にも動機となる線が浮上し…複雑化していく驚愕の真相とは?◆幻想的な雰囲気を融合した推理を軸とする本格ミステリ!上巻で既に大胆な暗合、暗号、暗示、予言が提示されていたが華麗にスルーw要所要所ピースを割と拾っていたのに全くそれを活かせず完敗です😅館シリーズとはまた一線を画す世界観存分に堪能しました✨2020/05/24