内容説明
将来を嘱望されながら、ある事件をきっかけに落ちぶれてしまったピアニスト響子。酒に溺れながら孤独に生きる彼女のもとに、かつて恋人だった透子が戻ってきた。ある日突然、赤ん坊を抱いて。しかし、女同士のカップルと赤ん坊の不思議な関係は、突然の透子の死によって壊れてしまう。希望を失いかけた響子の前に一人の青年が現れた――。切ない愛と新しい家族のかたちを描く、恋愛小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
24
同性愛に偏見はないつもりだったけれど、実際自分のまるで未知のレズビアンという世界を垣間見ると何とも不思議な気持ちになった。前半のありのままの感情をぶちまけているかのような描写は勢いがあってとても好きでした。後半はちょっと失速気味にも思えたけれど、ほっこりと暖かくこういう愛の形もあるのかと思った。2014/10/14
あんこ
24
最初、何て寂しくて可哀想な人なのだろうと思った。でも、愛を求めていた響子は透子から無償の愛を与えられていたことを感じた。誰かを愛することはこれほど美しいものなのだろうか。とても尊くて大切なものが込められていた物語。血の繋がらない三人だけど、それぞれの愛で繋がっていく様子は、純粋に美しいものだった。『聖家族』という在り方に納得。2014/04/02
sonic
19
2015年8冊目。中山可穂さんって『猫背の王子』を書いた方なのねと思いながら、読了。当時、話題作でしたよね。それはさておき、面白かったです。前半の梅ばあと透子とのやりとりの箇所等は、特に、別れた恋人に読んでもらいたいなと思いました。とりあえず、『はじめから親友であった人間と寝ることは難しいが、セックスを重ねてきた恋人と親友になることはできる』という言葉が印象的でした。そう信じてみることにします。他の作品も、おいおい、機会があれば読んでみようかな。ふと映画『チョコレートドーナツ』を彷彿としました。2015/03/04
つゆき
15
女の人しか愛せない女の苦悩と葛藤、その他諸々が絡み合い、複雑で奥の深い物語を形成している。思っていたよりも読み易く、何の抵抗も無くビアンの世界に引き込まれていた。新しい家族の形は血の繋がりを凌駕した時に完成する。サグラダ・ファミリア、あると思います。 2009/11/04
じぇりい
12
「弱法師」があまりにも自分の中で衝撃的だったので、別の作品も読んで見たくなって手にした一冊。読んでる間はやっぱり息苦しくて、でも最後はこんな家族の形もありかなと思わせるお話でした。2014/04/25