内容説明
世界中を旅する男が、久しぶりに元妻のつつましやかな家庭を訪れた。生活に疲れた元妻に、男は胸躍る冒険の数々や、途上国での豪奢な暮らしなど夢のような土産話を披露する……ユーモアに辛辣さを織り交ぜた表題作ほか、著者自身の戦争体験を反映した「記念品」、音楽を愛するあまり暴走する高校教師の苦悩を描く「女嫌いの少年」など、ヴォネガットならではの、優しくも皮肉な視点で描き出される珠玉の初期短篇を23篇収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
34
ヴォネガットの短編集。ヴォネガット氏の作品にはハッと物事の本質をつかみ取ったような言葉が多く、早く読み進めることができなかった。賢くて鋭いこれらの言葉は長編でもたくさんあるので、もったいなくて一言一言書き留めておきたくなるような言葉たちだ。そして傷ついた人たちにさらっと寄り添うような、短編。あーほんとにヴォネガットは大好きでたまらん。2017/11/20
かとめくん
10
ヴォネガット初期の短編を集めた1冊。どれもひねりが効いて楽しめました。表題作、「サンタ~」、「駆け落ち」あたりが特にお気に入りだけど、他も面白いです。2014/02/26
roughfractus02
7
合理主義的な世界は、人の善意を現実を華美にする虚飾のように扱う。作者の心温まる物語群は、虚飾となった善意が現実から離れて虚構の側に入り込み、目的意志に憑かれた人間関係に齟齬を来す様をシニカルにユーモアで包むように描く。一方、本書収録の23編の中の2編にあたるSFは、科学技術の進歩によって効率化する世界が目指す目的の向こうの世界が無辺の闇かもしれないことを、ニヒルにブラックユーモアを交えて読者に仄めかす。言葉と意識で覆われたそんな世界を笑えるなら、身体を含む無意識の領域が読者にもまだ残されているからだろう。2023/06/26
抹茶モナカ
7
ヴォネガットの初期短編集。渇いたユーモアは、この時点から発揮されている。小説家修業時代の作品なので、読む事については、そんなに優先度を高めなくて良い、と思う。他に読みたい本があるなら、その後でも良い感じ。発表順に収録されていて、前半は読むのが苦行なんだけど、徐々に読みやすい作品が増えて、世界が拡がる感覚。ヘルムホルツ先生の話は出色。引退宣言後に掘り出された当時は、価値があったのかもしれないけど、文庫化までされて、存在が当たり前になると、ねえ。2014/02/08
たかはし
5
カート・ヴォネガット短編集。氏の持つシニカルでユーモラス、それだけにはとどまらないバラエティに富んだ作品の数々を楽しめます。長編作品も素晴らしいが、個人的にはヴォネガットは短編の方が好み。ふとした時に1篇読みたくなるような魅力があります。2023/03/19