内容説明
為尊親王の死後、弟の敦道親王から和泉式部へ便りが届き、新たな恋が始まった。恋多き女、和泉式部が秀逸な歌とともに綴った王朝女流日記の傑作。平安時代の愛の苦悩を通して古典を楽しむ恰好の入門書。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
悲しみに沈んで…(一段)
メッセンジャーのご挨拶(二段‐1)
宮からのクイズ―橘の花(二段‐2)
橘の花と郭公のバトル―香りと声(二段‐3)
「恋」のスタートは「声」の和歌(二段‐4)
きつい返事でバッサリ(二段‐5)
ついに!宮からの来訪インフォメーション(三段‐1)
美しい宮がやって来た!(三段‐2)
だんだんと迫ってくる宮(三段‐3)
とうとう御簾のなかに入った宮(三段‐4)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
119
京都・誠心院は新京極通から入ってすぐ、境内は繁華街が近いのにひっそりとしている。ここには和泉式部の墓所がある。この日記は、冷泉天皇の皇子・為尊親王が没した後に、弟の敦道親王との恋の記録。この恋のわずか四年後に宮も27歳で亡くなってしまう。自身が宮邸に入り、正妻の北の方が去って行く場面でこの日記は終えている。宮と和泉式部の歌は全部でおよそ百首あり、全体のトーンに侘しさとはかなさを感じてしまう。恋多き女という噂、元夫との娘の行く末への心配、自身にアプローチする宮との身分の違い、悩み多き人生でも、恋に生きた。2023/05/21
佐島楓
53
愛人を連れてこられて正妻が出て行ってしまうという、なかなかにスキャンダラスな内容。今も昔も男女関係は本質的には変わらず。2016/03/23
芽
47
現代語訳→原文→寸評の順で書かれていて分かりやすい。現代語訳がとても良くて状況が呑み込みやすい。身分差の恋っていつの時代もドキドキハラハラで面白い。2015/09/20
しぃ
23
作者とタイトルしか知らなかった本を読んでみよう第二弾(第一弾は細雪)。訳、原文、ピンポイント解説な順番なので分かりやすかったです。が、日本語を読んでいるのに英語の多読をしている時と同じ気持ちになりました。知ってる単語と文節で意味を拾っていくので、ぼんやりと思い出せる古典の授業が役立ちました。内容もせつない恋愛日記で面白かったです。が、解説者の言うような言葉の煌めきまではまだ分かんないなあ。原文の短さに驚き、日本語の広さに気付かされます。2018/06/16
紅香@新刊購入まで積読消化あと4冊⭐︎
21
とても美しい歌の数々にときめく!女性は外を歩くことも、顔をみせることもはしたない時代。できることと言えば待つことと和歌で思いを発信することだけ。不自由であればあるほど、恋は冥き世にさす一縷の光。私には足りない、ぜひとも身につけたいと思う切なさと儚さがここにはある。敦道親王の自分勝手なアプローチ。情に溺れてしまう和泉式部。世間の噂に、正妻北の方の沈黙。筆者の原文から情熱的な訳がとてもリアル。平安熱が増す。古文や和歌をもっと深く読み解けたら楽しいだろうなぁ〜と意欲が湧く一冊。2023/04/29