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内容説明
満蒙の特殊権益をめぐる中国との対立から戦争の泥沼へとのめり込んでゆく日本。満州事変、日中戦争、太平洋戦争と続く動乱の時期、新聞は政府・軍部に対しどんな論陣を張り、いかに報道したのか。新聞紙法を始めとする法令、厳しい検閲に自由を奪われるとともに、戦争遂行へと自らの主張を転換する新聞。批判から迎合的煽動的論調への道筋を検証する。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこしま
22
言論死して国ついに滅ぶ。タイトルは太平洋戦争となっていますが、満州事変からはじまった15年戦争を新聞がどう書いたかというものです。最初が肝心だったかと。満州事変の際、軍や在郷軍人会から不買運動で迫られたのに対し、朝日毎日らの大手が屈して、擁護する記事を書いた時点で新聞としての役目が終わったと思います。軍は増長し暴力的になり、五一五や二二六のクーデター、そして戦争へと許してしまったのは新聞の大罪です。新聞社は廃刊するべきでした。また同じ過ちを今繰り返そうとしています。国民は煽られるのではなく監視しなくては。2019/09/11
masabi
8
【概要】新聞が満州事変前から節目の重大事件を前に第四の権力から軍部の宣伝機関に堕ちる過程を解説する。【感想】新聞の利益追求という側面と権力を監視し国民に情報を提供する公益に資する役割の狭間で揺れ動き、次第に後者が失われる。新聞も一枚岩とは言えず、新聞同士の競争から戦争報道、キャンペーンで国民を熱狂させ利益を上げるが、結果として軍部を増長させ言論の自由が封殺される。黄金時代を経て、自主規制、検閲による差し止め、軍部の指導記事、大本営発表と進む。満州事変から二・二六事件までの6年で社会が変容するのが怖い。2024/02/29
Ryuji
5
★★★★☆満州事変から終戦までの日本の新聞報道について書かれた本。少し難しいがとても興味深い本であった。「第四権力」や「社会の木鐸」と言われる新聞、当時は現代違い新聞とラジオ位しかない時代でありマスメディアとして現代よりもさらに重要な位置にいた新聞の無力さと権力(国家)に擦り寄った報道姿勢が良く分かる。中には敢然と立ち向かった報道人もいたが多勢に無勢、最後は大本営発表の垂れ流し。当時の「国防保安法」や「国家総動員法」に昨年成立した「特定秘密保護法」が頭をよぎった、これに限らないが新聞には真実の報道を望む。2014/04/23
takam
4
太平洋戦争に至るまでに、どのように新聞が言論の自由を奪われ、軍部の宣伝機関になったかを論じている。軍部の声が大きくなる昭和恐慌、226事件に至るまでで大手新聞紙はかなり萎縮している。著者の批判の矛先は新聞紙よりも軍部であり、軍部の傲慢さが新聞の言論を奪ったと批判している。終戦後も新聞会社はGHQの広報機関として言論を奪われれ翻弄される。言論の自由を欠いたことは批判されるべきだが、他国のメディア事情も同様だろう。ナショナリズムが台頭していた時代には、新聞は何らかの広報誌と化す。この点は米国も同じだと思う。2019/01/23
可兒
3
似たようなタイトルの本がまるっきり性質の違うことを書いていたので、実際に複数のメディアがどういう対応をしたのか確認する意味で再読。これも一部新聞を弁護する感があるが、それでも公平に描いていると思う2016/05/25