内容説明
昭和30年代短編集(3)。学問に打ち込み業績をあげながら、社会的評価を得られない研究者たちの情熱と怨念。「笛壺」「皿倉学説」「粗い網版」「陸行水行」の計4編。「粗い網版」は初文庫化。
※本書は、昭和30~40年代作品群から、研究者たちの孤独をテーマに4作品を選び、新たなタイトルを付けたオリジナル文庫が底本です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sashi_mono
19
一般に「学究モノ」と呼ばれる清張の中短編4作を収める。既読の「笛壺」と「陸行水行」のほかに、世間から忘れられつつある脳神経学者の孤独な内情に追った「皿倉学説」、大本教の弾圧事件を特高の側から描いた「粗い鋼板」といったラインナップ。「皿倉学説」が一等いい。2020/03/25
にせものばかり
10
清張さんの短編集ですがミステリー色は薄いです。新興宗教や邪馬台国の研究に尽くした人物にスポットを当てた作品です。2014/03/01
koji
7
松本清張記念館に行ってきました。ファンには堪らなく、いくら居ても飽きません。さて本書です。「陸行水行」を読みたくて、図書館から借りました。邪馬台国の推理は、「古代史疑」に待ちたいと思いますが、STORY展開には引き込まれます。特にラスト。古びた漁船を漕いで「邪馬台国」をめざす二人は、思わず山口百恵「乙女座宮」の「二人の乗ったゴンドラ」を思い出してしまいました。その他「皿倉学説」以外は初読です。主人公の偏狂ぶりのは凄まじさ。呪縛に囚われる「笛壺」、煩悶しながら時代に翻弄される「粗い網版」。読み応えがあります2015/08/23
とめきち
4
『皿倉学説』「脳性理学」といういままで自分が触れたことのない分野の話だったが、興味深く読めた。「実験に用いた猿の体重は六〇キロ」という辺りからグッと面白くなった。まさかという恐怖と好奇心で、先が気になって仕方なかった。ただ、裏表紙には、そのまさかの想像をたった一言でネタバレしており興ざめだった。先にここを読まなくて良かった。せっかく清張さんは言葉を選びながら慎重に物語を進行していたのに!主人公の採銅教授を取り囲む悪妻や出来の悪い愛人、ナメた態度をとる元弟子などを本当に憎らしく描いており採銅教授に同情した。2024/04/08
Ryoko
4
笛壺、皿倉学説まではなんとか読了。そのあとの2作品は途中で読むのを断念。研究者が主人公で一つのことをとことん調べる様子が書かれた短編集。それでも読了した2作品は研究のために家族を捨て落ちぶれた生活を送る主人公の悲しい心情が書かれていたり、戦時中の人体実験を思わせるような内容で面白かった。邪馬台国にはすごく興味があるが「陸行水行」は深く深く掘り下げ過ぎで途中で興味が途切れる。でももう一度、頑張って読んでみようかな。2021/02/11