内容説明
エブロ河を越えアルプスを越え、南イタリアの地カンナエでローマ軍団を打ち砕いたハンニバル。戦いに勝ちながら、最終的にローマという果実を刈り取らなかったのは何故なのか――。地中海世界の覇権をかけて大国ローマを屈服寸前まで追いつめたカルタゴの勇将、アレクサンドロス・カエサル・ナポレオンに比肩する天才の戦略と悲劇的な生涯を描く。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
powder snow
7
過去の人物像を描く場合、資料の多少にも依るが一番は、それを描く歴史家や著者の心情や視点にあるのはわかる。よって本書は著者の描きたかったハンニバル像だろうし、それについての正否は言えないと思う。だが本書をそのままに受け取り、一局面ごとに「ではどうすれば良かったのか」と考えても、本国との関係や置かれている立場、状況を思えば「やるしかなかった。そうするしかなかった」しかなく、何度となく胸がジーンとなった。著者にはローマ側のハンニバル像に対抗しているだけに見えて「おわりに」の最後の一文に「さすが学者」と思わされた2015/07/26
はばたくキツネ
6
類い希なる戦略家として知られるハンニバルについて、政治家としての側面からもアプローチしつつ、その生涯を概説的に記述した良書。元が1973年に刊行されたものであるので、現在から見ると幾分古い部分はあるが、それに関しても2005年の刊行時に加筆された付論で詳しく解説されている。中でも現在の状況を踏まえた参考文献に関する付論は、単に列挙するだけでなく、その内容や位置付けについても解説されており、今後の読書の助けとなってくれるだろう。ハンニバル研究の入り口としてはマストな一冊。2013/01/26
鐵太郎
5
ローマが地中海の覇権を得るために、どうしても外敵の存在を許すことが出来なかったこと、これがハンニバルを追い詰め、ついに詰め腹を切らせた原因です。ザマ以後のハンニバルを、坂道を転げ落ちる敗将のような筆致で描き、そのようにだけ理解していたのではいけないのでしょうね。長谷川氏は、ハンニバルという希代の英雄を、武将としてだけではなく政治家としての面まで追って描いて見せました。 ハンニバルとは、いかなる状況の中でも常に前を向いて、屈せず生きた希有な古代の人であった。この本は、そんなことを教えてくれる本です。2011/06/23
左手爆弾
4
ハンニバルの概説書がなかった時代に書かれたらしい本。一般的な歴史研究書のように史料への註があるものではなく、読み物的な体裁で進んでいく。軍略家のとしてのハンニバルだけでなく、その背景にある商業国家カルタゴの政治体制、当時の地中世界のヘレニズム的教養の浸透などに目を向ける。また、ポエニ戦争終結後の20年近いハンニバルの余生を、財政改革に取り組む内政家やローマ包囲網を画策する外交家などの側面にも光をあてている。読みやすいが、やはり、もう少し史料へのリンクが欲しいところだ。2018/01/11
かえるー@いくさ人
4
大スキピオとハンニバルは会談していないと書かれていた。2017/02/09