内容説明
町医者というものは、風ニモマケズ、雨ニモマケズ、常に歩いて疲れを知らぬ足そのものでなければならぬ――どんな患者も肝臓病に診たてたことから“肝臓先生”とあだ名された伊東の開業医・赤城風雲。戦争まっただなか、赤城は、蔓延する肝臓炎を撲滅せんと、寝食を忘れて研究に没頭、患者のために今日も走りまわっていた……。滑稽にして実直な、忘れ得ぬ人間像を描き出した感動の表題作のほか、「魔の退屈」「私は海をだきしめていたい」「ジロリの女」「行雲流水」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
92
どの短編も「デカダンス」が常に雰囲気として感じられました。本書から“人間ってこんなもんなんだ”ってことがこれでもかと主張されますが(多様性を知る上では良いのですが・・・)、だからこそ敢えて“人間だからこそ”と前向きな何かを考えたくもなります。2017/09/16
青蓮
81
「魔の退屈」「私は海をだきしめていたい」「ジロリの女」「行雲流水」「肝臓先生」5編収録。「私は海を〜」のみ既読。安吾の描く男女観、恋愛は女性がとにかく強い。肝が据わってる。「ジロリの女」の語り手であるゴロー三船はあれこれと奸計を巡らすも可笑しいくらい惚れた女性に媚びへつらって最後は破滅してしまう所が悲惨極まりない。「魔の退屈」にある「泥棒し、人殺しをしても欲しいものが存在するところに人間の真実の生活があるのだ」実に安吾らしい言葉だと思う。表題作の「肝臓先生」はじんと心に沁みるような感動的な作品でした。2019/09/06
青葉麒麟
39
『ジロリの女』までの作品が私小説なのか創作なのか判らなくて頭がごっちゃになった。女子に対する欲望をここまで明け透けに書くのは凄い。尊敬する。カタカナを独特な使い方するね。表題作の最後の詩にガツンと来ました( ノД`)…2014/04/06
ω
27
安吾先生〜ω 短編集です。表題作「肝臓先生」は、全ての病人は肝臓が腫れている!と気づき足の医者として走り回る。ラストへ向けての疾走感が良い。 いちばん好きなのは「行雲流水」ω。電車の中でマスクして読んでましたのでむふむふが止まらない。超笑う。たまんねー。でした。「ジロリの女」は間延びするんですが、ジロリの発音はジロリ⤴︎なのかジロリ⤵︎なのか最後まで迷った。笑2018/10/25
双海(ふたみ)
27
「戦争中、私ぐらいだらしのない男はめったになかったと思う。」という書き出しの「魔の退屈」が好きです。一気に読んでしまいました・・・。2014/10/02