内容説明
20年前に著者が予見した西武・堤義明氏の蹉跌!
第18回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
昭和末日本を騒然とさせた、あの名著がいま甦る。天皇と日本人、伝統とモダン。近代天皇制に織り込まれた記号を、世界を一周する取材で丹念に読み解いた、渾身の力作。プリンスホテルはなぜ旧皇族の土地を次々と取得し、一大グループをつくり上げることが出来たのか。その謎と西武王国・堤家支配の仕組みも解明。なぜ、いま、コクド(旧・国土計画)による西武鉄道支配が問題になってきたのかが手に取るようにわかる。
目次
第1部 プリンスホテルの謎(ブランドとしての皇族;土地収奪のからくり;天皇裕仁のゴルフコース ほか)
第2部 歌劇ミカドをめぐる旅―デォオ“MIKADO”との二度目の対話(ミシガン州ミカド町へ;ミカドゲームと残酷日本;西洋人の日本観と歌劇ミカド ほか)
第3部 心象風景のなかの天皇―デォオ“MIKADO”との三度目の対話(天皇崩御と世界の反応;つくられた御真影;ジェノヴァから来た男 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
212
第18回(1987年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞。 東京都知事を資金提供疑惑により 辞任した 猪瀬直樹の本である。 タイトルとは裏腹に 堤康次郎による 堤王国のパートの方が 面白い。 真実のほどは よくわからないが、 西武グループが天皇の御用地に目をつけた あたりは 興味深い。情報量が多すぎて、 肝心のミカドが浮かび上がらないのは 少し残念。2017/05/16
てつ
37
厚い、長い、くどい。濃い。 内容はともかく読んでて疲れました。2020/11/24
ころこ
25
本書が出版されたとき、立花隆は「皇居の周りを散歩しているようだ」といった感想を述べました。以前、本書のプロローグ「デュオMIKADO」のインタビューを読んだとき、立花と同様の感想を持ったものです。もっと簡潔に主張を述べるべきで天皇制と関係のない議論がなされているというのが否定的意見で、立花も大部な割に天皇制の本質に迫っていないと言いたかったのでしょう。では、天皇制の本質とは何なのか。要約すると、本書の主張は以下の2点です。①「ミカド」はシミュラークルである。複製技術は精巧なオリジナルのコピーをつくりますが2018/08/10
とみやん📖
15
序盤は面白いけど、肖像画やオペラ「ミカド」、日本風景論の辺りは相当間延びした。そこの説明いる?っていう感じで。物知りなのも調査好きも分かるけど、粘着質に自説をこじつけて正当化するような展開は、あまり好ましい感じはしない。 西武の堤康次郎のビジネスも専ら悪質な性質でもなく宮家にもメリットがあり、共存共栄の形を取っていたことが分かったのは収穫。尊皇派が作り上げた近代天皇制が現代人にも深く深層心理に影を落としていることを論じたかったのだろうが、個人的には、マニアックな文芸評論という評価でしかない。2019/09/15
LNGMN
12
1)西武=堤帝国と皇族の関係性 2)オペラ「ミカド」をテーマに日本と欧州、周縁と中心の関係性について3)御真影を例にし日本人の典型的心象風景はどのように構築されたか。 以上三部にわたって、明治以降の天皇制を軸に日本的な性質の正体、根源を論考している。1部だけでも充分に面白かったのだが、仔細にわたり取材しているので知識の押し付けがましさも感じてしまい、正直なところ2部以降は辛かった。私がなんとなく感じている日本的な空気の一端を知ることができた気はする。2024/03/02