内容説明
大奥女中と法華宗僧侶の乱れた性の証拠を掴むべく、密偵として大奥に忍び込んだ十九歳の登美にあちこちから魔の手が迫る。部屋住みの旗本三男坊、新之助は大胆に敵を翻弄し、事態はますます息をつかせぬ大攻防へ。両陣営とも犠牲者が続出。一方、家斉の病状はいよいよ重篤になってゆく。衝撃の結末は──。全てを見届けた新之助の目には、はかない陽炎が揺れていた。史料に基づくリアルさと小説家の想像力が豊かに溶け合った、極上の娯楽小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんた
8
苦手な時代の作品だったが、清張作品だから何とか読めた。江戸時代版スパイ大作戦か。2015/08/02
Hitoshi.F
7
読了。時代こそ違えどやはり松本清張のサスペンス作品、十分な読み応えがあった。概ね史実に基づく物語だというところがいい。「権力は必ず腐敗し、エリートは例外なく挫折する」というモチーフを小説という形で書き続けることに清張は執念を燃やしたという。後書きにあった「権力は空しい、その空しい権力になぜ人間は他人の命を奪い、自分の命をすり減らしてまで縋ろうとするのか」が印象的、現代でも不思議に思う時が多々ある。登場人物の島田新之助、実にカッコいい。現代のトムクルーズか(笑)2017/08/25
ロデタ
6
面白かったけど、明らかに危ないと分かってるんだから登美とお文は守ってやれよと思った。2019/10/14
go
6
下巻になっても面白さが落ちる事が無くかなり楽しめた。読み終えた後に腹に残る感じがあった。読み応えがあった。しみじみと良い題名だなと思った2015/02/08
タツ フカガワ
5
十二代将軍家慶の世で、いまだ幕府の実権を握る大御所家斉(五十四人の子をもうけた絶倫の人)。大奥を巻き込んでの家慶一派vs家斉一派の権力争奪がはらはらどきどきの展開で、一瞬も緩みがない面白さ。なかでも家斉派の巨魁、中野石翁が魅力的でした。2016/09/15