内容説明
「漢」滅び、「新」建つも!? 賢人皇帝の理想と破滅。漢帝国十代・成帝の時代。皇帝の従弟ながらも、苦学の日々を強いられる王莽(おうもう)。しかし彼は頭角を現し、十三代・平帝の摂政にまで上り詰める。そしてついには自ら皇帝となり新帝国を開くのだが!? 「簒奪者」としかみなされなかった王莽を、新たな視点で描いた中国歴史長編(講談社文庫)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
246
前後の漢の間にひっそりと存在していた新。簒奪者として名前だけは有名な王莽を描いた作品。私自身もこの時代のことは、ちんぷんかんぷんなまま読み始めたので新鮮ではあったが、無知でもわかるくらいに王莽を擁護気味な内容に思えた。真面目で有能な青年が徐々に腐敗していく様子は、一応それっぽく話が作られてはいる。しかし、それにしても帝となってからは急に別人のような愚行を繰り返すようになり、きちんと線になって捉えることがむずかしい。儒教と古礼への異常な傾倒に、もう少し肉付けを施してほしかったところ。2023/03/28
再び読書
40
残念ながらこの人の本は引き込まれません。吉川英治氏の「三国志」は内藤陳氏曰く最高の冒険小説の書評通り血沸き肉躍る作品で、中国史にどっぷりはまったのですが、この人の作品はなぜかワクワクしません。史実だとこれが正しいのでしょうが、歴史小説としては残念と言わざるを得ない。じやあなぜ読むと聞かれたら、この時代を書いた人をこの人しか知らないからです。王莽が理論(儒教)に囚われ、実態政治を理解していなかったことが政権簒奪者としての評価というのもうなずける。2016/01/19
Y2K☮
36
漢から帝位を簒奪して新を建国するも、僅か十五年で滅んだ王莽の生涯。後世の評価は辛いが病弱か幼子か浪費&漁色家の帝しかいなかった前漢末期では、苦労人且つ知恵者の彼は確かに救世主だった。そのまま外戚として権力を振るっていれば良かったが、彼自身の野心も周囲もそれを許さない。根拠無き讒言があっさり事実認定され、自然災害が施政者の不徳と見なされる時代。絶対的頂点まで上らなければ安心できない。でも残念ながら王莽には「独裁者」という荒馬を乗りこなす器量は無かった。或いは稀才に恵まれた者ほど己の夢想を律し難いものなのか。2015/07/10
糜竺(びじく)
23
中国の歴史で前漢と後漢とあったけど、その間の狭間の歴史が前から気になっていました。漢王朝の皇室の劉氏から皇室の座を奪った王莽とは何者か、この小説を読んで分かりました。若い頃は真面目だったのに、やはり権力を手にしていくと段々、人が変わっていくんですかね。あげくに自分の非を認めず、国は荒廃。意地になってたのでしょうか。なんか企業の経営者とか政治家でもこんな人いそう。2020/06/17
春風
18
古代中国。前漢末〜新朝〜後漢黎明期。西暦でいえば、BCとADを跨ぐ時代の人、王莽。中国史上初の政権簒奪者として知られる。小説中の王莽は、古礼に則った尚古主義的な政治を推進。これが滑稽に映る内はまだマシで、終いには滑稽を通り越して悲愴さが身を包む。緯学全盛の時代でもあり、現代からみれば胡散臭い御告げのようなものが流行しており、且つ信じられた時代なので、なかなか共感というふうにはいかなかった。反対に、その胡散臭い雰囲気を実感するのには適した小説でもある。2016/03/13