内容説明
男女の不思議、現代世相への感慨。人形遊びや松竹座通いなど著者を育んだ幼い頃の思い出。読書が心に彫りつけた感動の数々。文壇仲間の司馬遼太郎や吉行淳之介らとの親交と哀切な別れなど、老いをたのしみ、おとなの時間をはんなりと生きる芳醇なエッセンスが満載。昔を懐かしみ、今を愛おしむ名品揃いのエッセイ集。
目次
私、中年アリスです―まいにち薔薇色(鼠の草子 神様 ほか)
酔生夢死―日々雑感(酔生夢死 酩酊酒肴 ほか)
ひらかな文化―読書のたのしみ(旬の余韻 さわやかにもおかしい「母」 ほか)
露ちるや―思い出あれこれ(藤沢周平さんのユーモア 人蕩らし ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
74
面白かったです。昔を懐かしみながら、老いを楽しみ、大人の時間をゆったり過ごしているのが素敵でした。思い出を大切にしつつ、今を楽しむおせいさんは憧れですね。2018/05/29
涼
56
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2021/09/post-197a27.html やはり著者の本は楽しいです2021/09/30
kaoriction@感想は気まぐれに
29
「あとで読もうと思っても果たせぬことが多い。人間の読書の手持ち時間は、意外に少いのである。」本好きのサガであろうか。読みたい本は日々積まれてゆくが、それを読む時間が追いつかない。年齢と共にそれは顕著になっている気がする。「時間はある」と思っていた青春時代よりも「読書の手持ち時間」は確実に減っている。だからこそ、手にする本も選んでしまうし、読めばよかった、と後悔しない時間を過ごしたい。『楽老抄』なんてタイトルだけれど、若い人にこそ読んでほしいエッセイかも。楽しんで、いかに生きるか、老いるのか。はんなりと♪2014/05/11
カタコッタ
8
再読。実は司馬遼太郎の『街道をゆく』を読みかじっている。読みながら司馬遼太郎との交友関係をこの本に書かれていたことを思い出したら最初から読み直してしまった。面白かった。“人蕩し(人たらし)”で“カサだかくない”ご性格。お茶屋さんで司馬遼太郎と沈壽官さんに囲まれ炭坑節を踊りまくるお聖さん。絵になる光景です。あっぱれな大人のエッセイです。 2016/05/14
あやめ
6
自分の年代とはかなりかけ離れているのだけれど、田辺さんのいつの年代でも自由で快活な生きる様は本当に勇気付けられる。最後のほうの、「読書は実人生のほかに更に深い、美しい心の王国をもらたす」にぐっときた。人それぞれ、趣味や仕事、入れ込むものがあるなかで、読書や書くといったカテゴリに傾倒することを肯定された気持ち。好きなことをやって、何にでも楽しんで面白く生きていこうと、適当でもとにかく楽しくやっていこうという、原点のようなものを教えてくれた。2014/03/02