内容説明
今度はあなたが、爆発させてみる? 退屈な日常から逃れられるきっかけなんて、どこにでも転がってる。デパート勤務の的場智明は、地味な売り場での仕事に耐える日々を過ごしていた。そんな折、息子や娘の、“秘密”を妻までが一緒になって隠していたことに気づく。たまりにたまった憂さをはらすために彼がとった行動とは……。表題作など、現代人の爆発寸前の心境を的確に捉え、見事な筆致で描く、秀逸短編集。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
141
6編からなるいい意味でアッサリした短篇集ですが、短篇集とはあなどってはならずどの作品も‘重量級’の内容でした。人間の奥深くに潜む、誰もがもちうる可能性のある「心理」を巧みに描いた作品です。ジワジワと「どうなるのかなぁ」と軽いキモチで読んでいたら最後には「ええっ!」となる『夕立』が個人的にはとても印象的でした。そこらのホラー作品より全然コワいです。『夜明け前の~』や『福の神』などはココロが‘ほっこり’する温かいお話でもあり、ボリュームのわりにとても楽しめる素晴らしい短編集でした。読みやすい作風が何よりです。2014/03/10
アッシュ姉
73
中年男性の悲喜交々。家族のため会社のために必死で働いてきたのに報われず、不満や鬱憤が溜まっても吐き出すところさえない。うぅぅ、男はつらいよ。既読の短編集と比べると薄味だが、隙間時間にさらっと読めて楽しめた。六編のうち一味違う「かくし味」がお気に入り。旨いものには訳がある。ひぇぇ。2018/03/06
tengen
67
常連が集う居酒屋の煮込みの秘密。死のうとするタクシードライバーが拾ったモノは。痴漢カツアゲを繰り返す女子高生。苦労人女将の店に来る困った客は。平凡に幸せだったはずの家庭が。沈んだはずのTVマンの復活。 ☆彡表題作が現実的で恐ろしい。重松清さんや奥田英朗さんの作品にありそうな題材だが、重松さんならほっこり救われるようなオチ、奥田さんなら笑わせてくれるようなオチが用意されてそうですが。本作はオチが無いだけに悲惨、一家の主としては辛い。 かくし味 / 夜明け前の道 / 夕立 / 福の神 / 不発弾 / 幽霊 2015/01/13
saga
66
表題作を含む6編の短編集。はじめの「かくし味」で乃南ワールドに入り込む。絶品の料理が、実は鉛中毒の源泉という落ちが最高に怖い。表題作「不発弾」はごく普通の家庭に潜むストレスに上手く焦点を当てた作品。多くの家族に「不発弾」が存在する寓意を感じた。「幽霊」では蹴落とされたテレビマンが、深夜の通販番組をプロデュースして逆転劇を演じる、爽快で好きな話だった。2021/01/30
ユザキ部長
64
短編です。個々の話は面白かったです。乃南さんらしい書き方で人間臭くドロドロしてて読んでて胃がギュっとなる感覚。でも短編です。どれもこれも先が気になる。。2014/02/18