内容説明
12世紀末、6年間に及ぶ源平の争乱は幕を閉じた。戦いの中にある愛と死のドラマ、人間の哀歓を描く一大戦記。現代語訳を前面に出し、古文の力がなくても十分古典の面白さがわかる。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
71
今村平家物語のお供に。対訳・詳細解説を付けた段はポイントを絞り、代わりに各巻の見どころと細かい段ごとの概要を配して、これ1冊で長大な物語の全体像がつかめるので初学者の自分はとても重宝している。平家物語は「平家の興亡」が縦糸になってはいるが、途中で木曾の興亡やら義経の鮮烈デビューやらがド~ンと挿入されるし、平家の中でも例えば敦盛の段のように特別なスポットライトを浴びて詳細に語られる物語もあって、大河として読むと私なんぞはすぐさま迷子なので、この手のガイドは嬉しい。源平+天皇家の系図・合戦図と付録も充実♪2023/05/02
モモ
63
「祇園精舎の鐘の声~ただ春の夜の夢のごとし」など高校時代に好きになった言葉。平家物語は平家滅亡の悲しい話だと思っていたが、それだけではなかった。合戦の場で起こる出来事に、敵味方関係なく一緒に涙する。また言葉戦いがあるのに驚いた。平家は義経を孤児とそしり、源氏は乞食と悪態をつく。もはやこれまでと、知盛は乳母子の家長と手を組んで、ともに海に飛び込む。それに続く家来たち。その潔い武士としての姿に心打たれた。平家物語は平家の人々への追悼の意も含まれているのが分かる。いにしえの人々の思いがぎゅっとつまった物語。2020/07/23
MURAMASA
53
ちょうど今、授業で平家物語の「扇の的」をやってるところなんです。でも、恥ずかしながら平家物語といっても文学史的な知識があるだけで、通して読んだことはありません。それでも授業はできると言えばできるのだけど、話してる途中でちょっといい話を挟んでみたりとか、生徒から質問されたらぱっと答えるとかしたいじゃないですか。そんな不純な気持ちで読んでみましたが、なかなか面白い。私が中学生の頃は、教科書には「敦盛の最期」が載ってて、そういえば暗唱したなぁと懐かしくなりました。平家物語は平家一門の鎮魂のために作られた、 続2010/11/21
佐島楓
52
この本を導入として、原文にあたっていきたい。昔から木曽義仲が好きだったけれど、行いが滅茶苦茶乱暴な人だったようで幻滅してしまった。2016/06/14
ころこ
42
原文→現代語訳はごく一部で、プロットの小見出しを付した訳文の本だ。サーガ論では『平家物語』を〈世界〉と捉え、琵琶法師の語りや能の『俊寛』『敦盛』、近年のアニメ化などの個別の表現形式を「趣向」と捉えると、原文を全編読むのが必ずしも正統的な受け入れられ方ではないと思える。固有名や何処にどんなエピソードがあるかという共通認識を獲得し、様々な趣向で鑑賞するには、まずは〈世界〉を知ることが必要になる。音読で受け継がれ、近代的な黙読を通過して、メディアミックスの時代にまた別の見方で受け継いでいくのは自然なことである。2023/04/16