内容説明
孤島、《奇跡島》。昭和初期、名家の娘の手により享楽の館が築かれたが、彼女の不可解な死以来封印されてきた魔島。そこに眠る膨大な美術品を鑑定するために島を訪れた美大の芸術サークル。彼らを出迎えたのは凄惨な連続殺人だった。脱出不可能のパニックのなか、メンバーは自ら犯人を探し始める……。これぞ、本格推理小説! 著者が全霊を込めて取り組んだ《フーダニット(犯人探し)》。厳密な論理と巧妙な道具立てで読者に挑戦する意欲作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
101
叙述・メタ排除の純然たる本格フーダニットに拘った王道作品。戦前、贅の限りを尽くし孤島に建てられた白亜の館に死蔵されたままの、大量の美術品鑑定を依頼された美大の芸術研究サークルのメンバー。過去に当主「龍門有香子」の謎の怪死が起こったその館で次々とメンバーが奇怪な死を遂げていく。クローズドサークル・見立て殺人・驚きの真相と真犯人など本格好きには堪らないシチュエーションで、ラストに華麗な謎解きを披露する探偵役も意外な人物。そして、惨劇の後に附されたエピローグの哀しさが辛すぎて泣ける。本格好きなら必読の秀作。2014/06/23
ダイ@2019.11.2~一時休止
96
水乃サトル(大学生編)シリーズその1。途中でこれって水乃サトルじゃないの?ってなりますねぇ。出てくるの最後だし・・・。2016/03/25
セウテス
64
探偵水乃サトル大学生編第1弾。かつて惨劇があったと噂される館が在る奇跡島に、美大生達が訪れる。やがてクローズド・サークルと化した孤島で、連続殺人の幕が上がる。純粋なフーダニットだが、最後に推理を紐解く探偵役はいったい誰なのか、という謎も仕掛けてある。しかしこの驚きを味わう事は、大変難しいと思われる。何故なら、ミステリーの区分けとして本格なのかサスペンスなのか、シリーズ物なのか等、作品自体を選ぶ目安であるからだ。結果この人しか犯人となり得ない、という推理に辿り着く事は可能なのだが、動機には大いに不満が残る。2016/10/08
たか
49
水乃サトル学生時代シリーズ第1弾。 陰惨な殺人、華やかな美術品の数々、悪魔のような女、見立て殺人と道具立てはそろっているのだが、いろいろ詰め込み過ぎて、二階堂黎人にしてはいまいちの出来であると言わざるを得ない。C評価2019/10/06
夜間飛行
45
船上から島を眺めて絵画論を交わす所は、空気や水の質感まで伝わってきてわくわくする。だが白亜の館を聖家族教会に見立てる辺りから大仰に思え、アールヌーボーと錯視に覆われた館内もごちゃごちゃして落ち着かない。私の場合、殺人事件をロジックや会話を通して愉しむ為にミステリを読むのであるが、これでは無理かもしれないと思っていると、やっぱりそうなってしまった。キュビズムが屍体加工と結びつくまでは面白いけれど、肝心の見立て殺人はお座なりで、推理材料も十分示されない。「獄門島」のように理を崩さぬ程度に奇を盛り込んでほしい。2014/08/19