内容説明
1本の線だけで結ばれている、宙に浮かんだような若者たち。深夜のパソコン通信に嵌まる小田切薫の周りで次々殺人事件が起こる。それぞれの道を歩む高校の同級生たちは、友情と嫉妬が複雑に絡み合い……。オンライン社会の若者の心の揺れを描く、直木賞作家の傑作ミステリー。「パソコン通信殺人事件」改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tengen
69
乃南アサさん、初期の長編。パソコン通信というネット社会と現実の狭間で陥るミステリー。ネットで知り合った女性と会おうと上京して来た男性が立て続けに殺される。その女性、実際は男性なのだが…☆彡どうしてもパソコンが出てくる小説はネタが古臭くなるのはいた仕方ない。内容的には今のネット社会にも通じる話だが。2014/06/22
ちーたん
52
★★★☆☆少し時代の古い本でちょくちょく目にする『パソコン通信』を題材にした作品。ネット=パソコン通信と思ってたが、ちょっと違う?!物語は3浪中の薫(男)が現実世界よりチャットのバーチャル世界にハマり、HN「KAHORU」で、女としてチヤホヤされていた。一方で男性ばかりが狙われる他殺事件が相次ぐのだが、被害者は「KAHORU」に惚れた男ばかりだった!真相はわかりやすいものの、当時の?チャットの仕組みを知らないので、それが興味深く、追い詰められる様などドキドキした!今でいうSNS犯罪の先駆け的な話かも!2019/03/31
星落秋風五丈原
34
1990年10月講談社ノベルスとして刊行された「パソコン通信殺人事件」を改題し、加筆修正した。一本の線だけで結ばれている宙に浮かんだような若者達。3浪して深夜のパソコン通信にはまる小田切薫はオンでは女性のふりをしていて一種のアイドルだ。そんな彼女に会おうとした男性が2人続けて殺される。次第に気味悪くなってくる薫だったが…。犯人までたどり着く道筋はそんなに入り組んで作られていない。 まだ初期の頃の作品だな、という雰囲気。2001/10/19
アコ
32
パソコン通信にハマった3浪中の小田切薫。無邪気な女の子「KAHORU」を演じて夜な夜なチャットを楽しむ。その周りで起こる殺人事件。『リアル』の友人たちには言えない『バーチャル』世界の自分。勉強もせず長い時間を食いつくして交わされた幼稚で内容のない会話の歴史を目の当たりにしたときの虚無感。…これが本題かも!居心地の悪い現実から目を背けてネットに逃避する人は、快適なネット環境やスマホの普及とともに増加中かと。そうした社会を予測しているかのような20年以上前の物語。粗さも感じるも、まずまずの読み応え。2019/06/02
きのぴ
27
犯人は分かりやすかったけれど、乃南さん特有の読みやすさで一気に読めました。顔が見えないからこそのネットの楽しさ・怖さが分かりました。2018/01/03