内容説明
孤独な生い立ちの20歳の主人公は、伊豆の峠で旅芸人の一行と出会った。花のように笑い、無邪気に自分を慕う踊子の薫や素朴な人々と旅するうち、彼の心はやわらかくほぐれていくのだった。淡く、清冽な初恋を描いた名作「伊豆の踊子」、「十六歳の日記」など初期の短篇5編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mariya926
112
初期の短編5つ。いつの間にか我が家の本棚にありました。多分妹が断捨離で持ってきた気がします。難しいかと思って読んでいなかった文豪ですが、やっぱり難解でした。色々な背景や考えを丁寧に説明してくれる小説に慣れてしまったということを感じました。難解だったけど読みやすかったので、今後も文豪と言われている人の小説も少しずつ読んでいってみたいと思いました。解説があってくれてよかったのと、川端康成さんの年譜で人となりをしれてよかったですが、顔が祖父に似ている気が…。2019/02/18
Y2K☮
54
再読。川端はニュータイプだ。三島や太宰、漱石とは決定的に違う。「伊豆の踊子」は分かる。過酷な日々を健気に生きる踊子の純粋さに打たれ、変なプライドや僻み根性から抜け出す希望溢れる物語。他の作品も世間から白い目で見られながらどうにか頑張って生きている人々への味方ではある。だが「死体紹介人」と「温泉宿」はそこに留まらない。どこか他人事で筋も有る様で無い様で有る。樋口一葉と違って女性の描写に容赦ゼロ。過酷なリアルをいっそう辛辣に創り込む筆に躊躇いが見えない。文学的サイコパス。この人を楽しむにはまだ修行が足りない。2016/01/01
扉のこちら側
39
初読。表題作はその時代背景ゆえに、エリートである自分が身分の低い旅芸人の少女に牽かれているのを認められないという、初恋のもどかしさを感じた。別れの時に流した涙は、手をふる踊り子の姿に自分の恋をはっきりと自覚したから。2013/01/06
GIN@本棚大洪水中
24
高校生の時、学校の実力問題で出題されてから本格的に興味を持っていた。伊豆の踊子:薫と主人公の淡い(?)恋にとても好ましいものを感じる。ラストに当たって、主人公の人間的成長に感動してしまった。感想が下手で非情に恐縮だが、恋を重ねることは精神的成長を促進するのではないかな。と私は思う。2013/09/15
たみ
20
表題作含む5の短編集。初期の短編を集めたもののようです。[伊豆の踊子][招魂祭一景][十六歳の日記][死体紹介人][温泉宿]を収録。語注がたいへん親切で、「どてら」や「らっぱ飲み」にも注がついています。行間や語間を見つめる技術が必要なのかな。巻末解説を読んでようやく、そーいうお話だったのか、とわかった気分になりました。ほとんど面識のない女性を、死後に内縁の妻扱いして死体を勝手に解剖にまわしたり、その女性の妹が病死しそうになると結婚しようとする新八という男性が出てくる[死体紹介人]が不思議におもしろかった。2015/02/04