講談社文芸文庫<br> 帰らざる夏

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講談社文芸文庫
帰らざる夏

  • 著者名:加賀乙彦【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 講談社(2014/05発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061962354

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内容説明

省治は、時代の要請や陸軍将校の従兄への憧れなどから100人に1人の難関を突破し陸軍幼年学校へ入学する。日々繰返される過酷な修練に耐え、皇国の不滅を信じ、鉄壁の軍国思想を培うが、敗戦。〈聖戦〉を信じた心は引裂かれ玉音放送を否定、大混乱の只中で〈義〉に殉じ自決。戦時下の特異な青春の苦悩を鮮烈に描いた力作長篇。谷崎潤一郎賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たぬ

31
☆4 後半の玉音放送以降の心の動きや周囲の混乱ぶりがとても濃く重い。これは陛下の本心ではない奸臣の陰謀だわが神国が負けるはずはないんだと敗戦を受け入れることができない。上官や学校仲間が蹶起を諦めてもその思いは揺るがずついに切腹する。10代半ばの少年がこんな壮絶な死に方を選ぶなんて。これも戦争の犠牲者と言えるのだろうか。2022/10/21

るか

20
★★★★★今まで、戦時下の死生観や軍国思想について「よく分からない」「理解できない」ものだと思っていた。しかし、それは戦争を知らない世代である事を言い訳に「理解しようとしていなかった」のだと気付かされた。省治というまっさらな少年が鉄壁の軍国思想を培うまでの二年有半が緻密に書き尽くされている。悩み苦しんだ省治が選んだ最期を、どうして理解できないと言えようか。私の歴史知識が浅いため読むのに苦心した部分があったが、読後、太平洋戦争について「もっと知りたい」と思わせてくれた小説である。2016/11/24

めめめ

14
16歳と18歳で腹切らなくてもいいだろうが…。我々はあの戦争がどんな結末を迎えたか知っているので、省治が「神州日本は絶対に負けない」と意気込むたびにやるせなくなる。玉音放送からの彼の混乱ぶり、狼狽ぶりは辛すぎた。随所に見られるとおり、省治は純粋で繊細な、戦時下の一少年だったのに…。源と出逢えたことがせめてもの幸せだったのか。「日本はどうして戦争をしたのか?」その答えが、この長編に現れているような気がする。2017/12/16

ヘラジカ

14
戦時下の日本国に生まれ、戦争の為に若き頃より軍人として備えるということが如何なるものか、ということを描いた稀有な作品。世界の流れや国の流れを自分の意志として、命を賭して戦わなければならない時代が確かに存在した。激流に流されるように盲目的に破滅へと突き進んだ軍人達の姿は絶望的とも滑稽とも映る。また日本史の濃密な闇に生きる少年の物語としての本書は、今の我が国に必要で足りないものが確かに感じ取れる作品でもある。あの頃のように国と共に生きる時代はもうないと思うと、様々な意味で帰らざる季節なのだと深く感動した。 2012/05/25

qwer0987

11
すばらしかった。陸軍幼年学校に進学した省治は積極的に入学したわけでなく、死をこわがる普通の少年だった。だがイデオロギー色の強い閉鎖空間に身を置くうち色々変わっていく。彼の友人鬼頭は硬直化した組織の欺瞞を見抜き退学するが、それとは対照的だ。だから玉音放送を前にして省治たち幼年学校生徒は動揺する。その放送を否定し、戦争継続を目指そうとする者もあれば、聖断を受け入れあっさりと変節する者まで様々だ。そこには滑稽さと醜さと自己欺瞞と身勝手な論理と潔癖さに溢れている。そんなこの時代の空気をうまく救い上げた傑作である2023/04/16

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