内容説明
“春になれば……”みんなそんな想いを抱いて、吹きつけるそれぞれの人生の風の中にいた―。旅する空に、休息の夜に、喧噪の都会に、椎名誠のかたわらを通り過ぎていった女たち。遥か少年の日のおぼろ月夜に咲く、菜の花の記憶が、出会い別れた女たちとの思い出とクロスしてオトコのたしかな人生を浮き彫りにする。哀しくて、やがてアカルイ、11のしみじみ私小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あび
12
短編私小説。11篇で構成。それぞれの物語が独立しているわけでなく、少しずつ話が関係している。あまり頭を遣わずにスラスラと読めてしまうので楽だった。2018/01/09
東森久利斗
5
怖い。沢野ひとし画伯の描く女の眼が怖い。椎名誠が出会う女の行動、言動が怖い。小野不由美のホラーのように、ジワジワ、ザワザワと心の琴線を触発する。うららかな春の陽気、原色豊かな菜の花畑、遊歩道の先に見え隠れする荒涼としたモノトーンな空き地、佇む女の後ろ姿、振り返らざるを得ない執拗な足跡。2021/04/07
ソラ
5
内容(「BOOK」データベースより) “春になれば…”みんなそんな想いを抱いて、吹きつけるそれぞれの人生の風の中にいた―。旅する空に、休息の夜に、喧噪の都会に、椎名誠のかたわらを通り過ぎていった女たち。遥か少年の日のおぼろ月夜に咲く、菜の花の記憶が、出会い別れた女たちとの思い出とクロスしてオトコのたしかな人生を浮き彫りにする。 2010/01/04
あにき
4
電子版。気になる消息はこちらの方だったようで、先に読む。が、予備知識と『本人に訊く』の内容以上の事は書かれていなかった。 まぁ、知ったところで、どうということもないのだが、自分も似ているなぁと思うところを確認してみたいだけの話です。2016/11/18
Mingus
3
ベストセラーとなった岳も中学生になり、シーナの作家としてのキャリア的にも中期と捉えれば良いだろうか。過酷な旅程と原稿の締切の隙間に出逢う人々、ささやかな日常、常に動き続けるが故にシーナの文体の隙間から、私はどこか埋め合わせられないぽっかりとした穴を感じさせる。穴を埋めるように想起される旅の記憶と人と人との繋がりと哀愁感。エッセイからSFまで多岐に渡るシーナだが、個人的にはこんな感じの極めて日常的な私小説が、とりとめないなりに一番好きだったりする。2023/01/06