内容説明
国家権力の介入によって、岬一郎を応援していた町内の人々の心が離れはじめた。確固とした信念のもと、日本政府の呼び出しに応じない岬一郎。最後の理解者で元雑誌編集者の野口志郎とともに、彼は孤独に追いつめられてゆく……。「日本SF大賞」受賞の著者渾身の力作大長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
45
感動した。そしてラストには泣きそうになった(堪えたけど)超能力を持った者が悲しい生涯を遂げる話は数多くあるが、東京深川という下町を舞台としたことで、怖いぐらいのリアリティが生まれている。そして話を急がせることなく、じっくりとじっくりと進行させることで憤りや恐怖を上手に生み出している。そして、ラストの野口の言葉が胸に突き刺さる。名作です。2012/02/01
ぺぱごじら
6
段々岬が神々しくなっていき、遠くなる感じが切ない。語り部の主人公の最後のセリフには読み手の気持ちも代弁しているかのよう。
シロー
5
理不尽で悲劇的なラストへ疾走するなか、?だったのが歯医者のドラ息子を殺す必要があったのか? 岬一郎の内面描写がないので不明なのですが、少なくとも「未必の故意」は問われそう。あと、こういう対応になるのも仕方無いと思うのが「麻原彰晃」の存在。奴の超能力はペテンでしたが多くの信者を精神支配し、私利私欲を満たし、社会を逆恨みして多くの犠牲者を生みました。岬一郎が麻原のような人格だった場合人類に抵抗の道は皆無です。野口を筆頭に権力から遠い人々の行動に一抹の救いを覚えつつ、ラストの一行は忘れ難い深い余韻が残りました。2015/04/29
らくだ
4
壮大なテーマを至近な舞台(下町)で描いた実験小説。最後はそうきたか…。(^_^)2010/11/23
てら
4
現代社会、いや日本という国家に「神」は不要であるという政府。そして岬一郎は。半村イズムの結晶と言うべき大作。日本SF大賞受賞作品。