内容説明
他の介入を許さず気儘に生きた〈放蕩無頼〉の人生。雪の上で夥しい血を吐き、狂い死した父は、娘に〈真っとう〉に生きろと教えた。しかし娘は、父の道をなぞるように更に鮮烈に生きた。70を越した女が、この世に生れ過した不思議を恬淡と語りかける「或る一人の女の話」。「刺す」を併録。自伝的傑作2篇。
感想・レビュー
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AR読書記録
6
初宇野千代。奥付裏広告の『雨の音』に、「“ひとを愛し尽す女”を生きた自伝世界」とあるんだけど、うーん。「愛し/尽す」ならそうかもしれないが、「愛し尽す」ではないような。比較的容易に愛の境遇に落ち込んでいくけれども、溺れないように(と意識してかしないでか)張り巡らす心の鎧の厚いこと。とはいえやはり溺れないでもいられず... 読む方も不可思議、本人ですら不可思議な自分の中の「女」を、ひたすら見つめていく、って感じか。しかし一篇目であれだけ結婚願望ないって言ってて、二篇目はどっぷり結婚にはまってるの...ナゼ?2017/08/23
みや
2
出生から67歳で最後の夫と離婚するまでを描いた自伝的小説2篇。著者はあとがきで「行動から考えが引き出される」との思想を披瀝しているが、恩を忘れ、人を裏切り、物事に拘泥せず流浪する生き方は、利己主義との謗りを免れまい。反語の多用も押し付けがましく感じられ、読み手を苛立たせる。その行動力と波乱万丈の男性遍歴は興味深く、読み物としては楽しめたが、このような内容により著者が表現しようとした真意を汲み取ることはできなかった。2018/10/13
古関
1
時間かかったやつ。こういう時代のは気持ちのは描写が削ぎ落とされてるので気持ちは自由に想像したり、だいたいはしない。でいいと思ってる。文学作品の教養がないので。2018/02/26
ソラオ
0
夫婦喧嘩して“離婚かも”と思って冷戦している時に読むと痛いです。 宇野千代はもてる女ではないですね。 2017/01/05
もじ
0
感性として強く女性でありながら、文化的な女性像にはそぐわずに生きたという点で、19世紀の女性画家シュザンヌ・ヴァラドンを思い出した。奔放なようで孤独なのは、美という世界に住む人の独特な生き方なのかと思ったり。『或る一人の女の話』と『刺す』は、女性のまったく逆の姿を描いているのだけど、恋にまつわる残酷さが潜んでいるのは、どちらも近い。2013/04/07