内容説明
窓際族とさげすまれ、女房、子供にいびられる中年男は卵料理に生きがいを見いだした。シブチンでええ格好しいの妻、親爺を煙たがる子供らに囲まれて、孤独で寡黙なお父さんの胸の中の呟きが、おかしくて哀しい表題作。やっと建てたマイホームを女房一族に占領され、挙句の果てに転勤命令。愛家家の悲哀を描く「かたつむり」他、男権弱化の世の中で夕暮れを迎えた男女の甘くも苦い極めつきの7編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
95
面白かったです。おせいさんの短編としては鉄板ネタでしょう。中年男の哀愁漂う感じが何とも言えません。ちょっと枯れたような男女の関係もユーモアがあります。日常の一コマですが、ほのぼのホロリとさせられる雰囲気はおせいさんにしか出せませんね。2016/08/01
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
26
何回目かの再読。やや、働き盛りを過ぎた男達の短編集。何で何回も読んでしまうのか、と自分でも謎であるが、出世コースから外れたおじさんが、コソコソと台所に入って自分の好きなオムライスを作る姿がなんとも美味しそうで、ついつい読んでしまう。家を建てるについて、ケンケンとケンカする夫婦の作品もリアル。2015/12/24
佐島楓
25
中年と呼ばれる年齢に入った夫婦の物語七編。今まで読んだことがなかった田辺作品の男性視点を拝読。良かった。悲哀とユーモアは紙一重。なかなかにきわどいことを言わせたりさせたりしているのだが、いやらしくはならない。笑ってしまうのである。このからっとしたところが田辺さんの魅力。ごちそうさまでした。2013/10/15
とも
17
中年世代のお父さん方の悲哀と哀愁漂う短編集。女性の心情を巧みに描かれる田辺さんやけど男性の心情も実に巧みに描かれる。中年世代ど真ん中の自分も「ふんふん」「そーだそーだ」と納得する事多々あり。 責任を負わされる事の多い中年世代。色んなしがらみに縛られ、自由に伸び伸び出来たヒラ時代を「極楽や」と宣うあたりも納得。 田辺さんらしい暖かい雰囲気に包まれた一冊でした。2020/11/06
KANEO
9
大阪を舞台にした中年男性(例外有)たちの悲哀の日常を切なくもユーモラスに描いた短編小説集。 自分がこの年齢になったからこそしみじみと楽しめる作品だったように思う。何時の時代もお父さんは孤独なものなのかも。なんだか読みながら自分の父にも申し訳ない気分になったり。 この本で描かれている中年男性のリアルな心情を女性が描いているってのにも驚く。 大阪ってなかなか庶民的でいい街なのかも。と大阪遠征前にそう思えたのも良かったかな。2014/07/28