内容説明
ロシア社会思想史は、インテリゲンツィヤによる人格と人間の解放運動史である。彼らの行く手を阻むのは、無個性、平板さ、狭さを誇るこの世にはびこる小市民主義である。ラヂーシェフ、デカブリストから、西欧主義とスラヴ主義を総合してロシア社会主義=ナロード主義を創始したゲルツェンを経て、革命的民主主義者チェルヌイシェフスキーへと「最終目的である人間」の旗が受け継がれていく。ロシア思想史研究の古典。
目次
一九世紀の扉を前にして
センチメンタリズムとロマンチシズム
デカブリスト
プーシキンとレールモントフ
官製小市民主義時代
ゴーゴリ
ゴンチャローフ
余計者
三〇年代
ベリンスキー
西欧主義者とスラヴ主義者
ゲルツェン
六〇年代
チェルヌイシエフスキー
ピーサレフ
ニヒリズム
著者等紹介
佐野努[サノツトム]
1937年東京都生まれ、1993年没。早稲田大学大学院露文科博士課程修了。慶應義塾大学文学部教授。ロシア・ソヴィエト文学、ロシア思想史専攻
佐野洋子[サノヨウコ]
1973年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科ロシア文学専攻修士課程修了、博士課程満期退学。慶應義塾大学他非常勤講師。ロシア口承文芸、19世紀ロシア文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
6
ビンゴ。ナロード思想は大正期の思想に大きな影響を与えたんではないかと思うんだが、代表的な小説を読むだけじゃその思想史上の正体がつかめなかった。社会思想史としてロシア文学におけるロマン主義やら写実主義の意味を解説してくれる本書はかなりありがたい。これを読むと日本の文学史の理解も深まりそう。ロシアのインテリゲンツィヤの歴史は「小市民主義」なるものから個人の人格を守る闘いであるという理解は果して妥当なものなのかは判断できんが、ロマン主義からは革命的社会主義にもオルテガ的な保守主義にも行くつくことができるのだな。2019/02/24