内容説明
私は無罪を確信しながら死刑判決を言い渡した―。39年前の過ちを自ら告白した元エリート判事の転落と再生。
目次
1 接触
2 疑惑
3 悲劇
4 背信
5 天使
6 子供
7 旧友
8 再生
著者等紹介
尾形誠規[オガタセイキ]
1959年生まれ。鉄人社勤務。書籍担当編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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だまし売りNo
31
冤罪は裁判官も含めて国民の生活を破壊する。冤罪は美談にならない。2023/04/16
うにこ
3
袴田巌の冤罪事件において、被告人の無罪を確信しながら死刑判決文を書き、読み上げた判事、その後の転落人生。袴田さんと同じ年に生まれ、彼とはまたべつの地獄に落ちた半生と、世に出て謝罪を果たすまでの経緯。かなり読ませる。冤罪が起こりうる限り死刑制度には懐疑をいだくものだが、この本はそういう直球を投げない。当事者はあと何人いて、そのうち何人までがこの判事のように「じぶんは当事者だ」と自覚しているだろうか?すくなくとも彼は死後地獄に落ちることはない、彼は袴田さんとともに地獄に落ち、かつ生き続ける事を選んだのだから。2010/09/06
あずき
2
袴田さん事件で、無罪と確信しながらも死刑判決を言い渡した元主任裁判官・熊本典道さん。40年の時を経て、あの裁判は過ちであったと語った姿は、果たして美談だけであったのか。北尾トロさんと一緒に、裁判の本を作った尾形さんが、調べた姿とは。死刑囚とその裁判官の対比が、重く浮かび上がるも非常に読みやすく興味深いです。特に子供、旧友からの章は圧巻で、人と人との繋がりに思いをはせずにいられません。袴田さんが釈放された今こそ、熊本さんがどう思ったか、尾形さんが一番聞きたいだろうなあと。2014/05/24
escher
1
http://amzn.to/1pnjXMZ 題名から分かるように、美談で終わらないルポ。家族への聞き込みもあるのだけど、一番印象に残っているのは「いろいろ追い詰められて、死のうと思ったのは間違いないんだろうけど、父は自分の死さえも、人生の美しい1ページにしよう、ドラマチックにしようって考えてる。それが私にはどうしても見えちゃうんですよね」という話。どうしてもこういう本は「美談」の部分だけ書いてしまうものだが、そうではない部分もきっちり描かれていて面白い。2014/03/29
344
1
冤罪事件を裁いたことがその後の人生を動かしたのは間違いない。でもそれがすべての理由じゃない。冤罪事件を大きく動かす告白をしたことは大きい。でも決してヒーローではない。でもその正義感は偽りではなくて……ひとりの人物の複雑な面を見たような感想です。人間って簡単に一言で表せるようなものじゃないですね。2013/06/10