内容説明
脳梗塞で倒れてのちも、車椅子で能楽堂に通い、能の現代性とは何かを問い続ける一方、新作能作者として『一石仙人』『望恨歌』『原爆忌』『長崎の聖母』など、現代が抱える問題を最深部から結晶化させる作品を生み出す。作り手と観客という両面から能の現場にたつ著者の、能をめぐる思考の集成。
目次
1 能の見える風景(薪能の不思議;能と霊魂;聖女小町 ほか)
2 能評(興福寺勧進能『海士』―鮮やかな場面転換の連打;興福寺勧進能『景清』―障害者の矜持と失意の心理劇;新作能『不知火』―能を超えた能 ほか)
3 去りしひとに(白洲正子さんのお能の実力;白州さんの心残り;山姥の死―鶴見和子さん)
著者等紹介
多田富雄[タダトミオ]
1934年、茨城県結城市生まれ。東京大学名誉教授。専攻・免疫学。元・国際免疫学会連合会長。1959年千葉大学医学部卒業。同大学医学部教授、東京大学医学部教授、東京理科大学生命科学研究所長を歴任。71年、免疫応答を調整するサプレッサー(抑制)T細胞を発見、野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞など多数受賞。84年文化功労者。能に造詣が深く、舞台で小鼓を自ら打ち、また『無明の井』『望恨歌』『一石仙人』などの新作能を手がける。2001年5月2日、旅先の金沢で脳梗塞に倒れ、右半身麻痺と構音障害、嚥下障害となる。病を得てのちも新作能『原爆忌』『長崎の聖母』を発表。著書『免疫の意味論』(大佛次郎賞)『独酌余滴』(日本エッセイストクラブ賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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