内容説明
厳粛なる恐怖や権威主義に対峙し、さかしまの世を到来させるカーニヴァル的な“笑い”。ラブレー文学に住まう陽気でグロテスクな民衆とそのイメージを斬新に読み解き、中世・ルネサンス文化の新たなる世界像を打ち立てた、著者の小説論の集大成にして彼の名を世に知らしめた代表作、待望の新訳決定版。
目次
フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネサンスの民衆文化(問題設定;笑いの歴史におけるラブレー;ラブレーの小説における広場の言葉;ラブレーの小説における民衆的な祝祭形式とその形象;ラブレーにおける饗宴の形象;ラブレーにおけるグロテスクな身体像とその源泉;ラブレーの小説における物質的・身体的下部の諸形象;ラブレーの形象と同時代の現実)
“ラブレー”の増補・改訂
著者等紹介
杉里直人[スギサトナオト]
1956年、岐阜県生まれ。早稲田大学大学院露文専攻博士課程中退。現在、早稲田大学ほか非常勤講師。専攻、ロシア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
一方的に伝達される(双方向でも)言説に対する発話の多種多様性を、ラブレー作品の背景にある中世の民衆文化に見出し、そのカーニバル的転倒、清濁の混交、笑い等の価値が作品の終わりを目指す『ドン・キホーテ』の印刷文化優位の小説では衰退していく様を描く。ホイジンガとともに文化記号論的にも読まれる本書だが、著者の描く言説と発話の関係を見れば、管理体制下で批判的に生き延びるための説得や修辞の用例集としての役割もあるように見える。現代がそんな時代ではないと言い切れないのなら、この大著は今を生きるためのガイドブックである。2017/02/14