文化とまちづくり叢書
和菓子 伝統と創造―何に価値の真正性を見出すのか

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  • サイズ A5判/ページ数 192p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784880654423
  • NDC分類 588.36
  • Cコード C0030

出版社内容情報

 豊かな自然と暮らしの営みとともに発展してきた和菓子。創業数百年の老舗の職人が作る茶席用、贈答用の和菓子。家庭で作られる「おはぎ」や工業的な大量生産による和菓子。異なる業界とのコラボレーションや作家・アーティストとしての職人の登場など、和菓子価値は多様化している。



 本書では和菓子の行事食としての側面、現在の消費額や生産量などについてデータを分析し、京菓子を例に老舗の伝統と優れた品質を構築する背景を明らかにする。そして「和菓子の新しい価値の登場」について近年の和菓子のアート化、和菓子とデザインのコラボレーション、和菓子イベントといったプロジェクトによる新たな需要の創出を紹介。さらに海外から見た和菓子の価値と消費動向を「とらや パリ店」の取材などから考察する。



 本書は農産品の価値づけに多くの研究蓄積があるフランスの「コンヴァシオン理論」を基に和菓子の多様な価値を統一的に説明。和菓子の経済的そして社会的、文化的といった様々な価値づけを分析し、伝統から創造産業へ向かう和菓子の新しい価値の発信と、海外における和菓子とその根底にある日本文化の理解を深めるための最新刊。

第1章 食文化としての「和菓子」

1.和菓子の歴史

2.地域や都市の文化的特徴を示す和菓子

2-1 石川県金沢市の事例

2-2 佐賀県小城市「小城羊羹」の事例

2-3 長崎県の「長崎カステラ」の事例

2-4 岐阜県中津川市「栗きんとん」の事例

3.民俗学から見た菓子と生活

4.暮らしの変化と和菓子

ミニコラム:菓子パン文化を地域の食文化へと転換しようとする事例



第2章 和菓子産業の現状

1.和菓子産業の構造と規模

2.和菓子の消費状況

ミニコラム:和菓子産業を支える北海道十勝産小豆



【理論編】変化する和菓子業界を俯瞰するための分析枠組み

1.コンヴァンシオン理論

2.「テロワール」と「特異性」、「真正性」

3.コンヴァンシオン理論の「シテcit?概念」と和菓子

3-1 家内的シテ

3-2 市場のシテ

3-3 工場のシテ

3-4 インスピレーションのシテ

3-5 プロジェクトのシテ

3-6 世論のシテ

3-7 公民的シテ

4.和菓子の変化と価値づけ論



第3章 京菓子の世界 ー暖簾、職人技、伝統美ー

1.京菓子の原点

1-1 川端道喜の餅菓子

1-2 虎屋の菓子

1-3 砂糖と上菓子屋

1-4 供饌菓子

2.象徴的要素と御用

3.茶の湯の菓子の評価

3-1 意匠と菓銘

 菓子の用いられ方/意匠と菓銘/茶人による菓子の選択と評価/茶事の本来の意味

3-2 茶の湯に相応しい味、材料とは

 味わいと材料/製餡の重要性

3-3 道具

4.クラブ財としての機能

5.「京菓子」の真正性

6.京菓子の真正性の現在



第4章 和菓子の新しい価値の登場

  ーアート化(唯美化)、コラボレーション、プロジェクト

1.デザインとコラボレーション  亀屋良長の活動

2.アート化する和菓子 ー日菓、杉山早陽子氏の活動

3.地域とともにあるアトリエ  wagashi asobiの活動

4.パフォーマンスとソーシャルメディアの時代  三堀純一氏の活動

5.和菓子のアート化(唯美化)と業界内のコンフリクト

6.「プロジェクト」の萌芽  「ワカタク」の活動

7.プロジェクトのシテによる新しい成長モデル

8.不協和と多様な価値づけ



第5章 和菓子文化の海外発信 ?フランスを事例に

1.とらや パリ店

2.羊羹コレクションin Paris 中小企業庁「JAPANブランド育成支援事業」

3.フランス人の和菓子づくりから見たグローバル化の課題と考察

4.フランスでの和菓子から学ぶ和菓子の価値



第6章 これからの和菓子

1.和菓子の伝統的な真正性

1-1 和菓子の真正性の原点

1-2 和菓子の真正性の危機

2.和菓子の海外展開への展望

2-1 チョコレートにおける日本食素材導入の先駆的事例

2-2 和菓子の海外展開にあたっての課題

3.和菓子の審美性、アート化の課題

3-1 茶の湯における和菓子の審美的評価

3-2 和菓子のアート化

3-3 模倣は今後も許され続けるか

3-4 和菓子の品質評価制度の必要性

森崎 美穂子[モリサキ ミホコ]
著・文・その他

内容説明

いま、何が起こっているのか?歴史や伝統によって評価されてきた和菓子と業界のありように、“コンヴァンシオン理論”の“シテ概念”を導入して、和菓子の多様な価値づけを説明する試み。

目次

第1章 食文化としての「和菓子」
第2章 和菓子産業の現状
第3章 京菓子の世界―暖簾、職人技、伝統美
第4章 新しい価値の登場―アート化(唯美化)、コラボレーション、プロジェクト
第5章 和菓子文化の海外発信―フランスを事例に
第6章 これからの和菓子

著者等紹介

森崎美穂子[モリサキミホコ]
大阪市立大学大学院創造都市研究科客員研究員。大阪市立大学大学院創造都市研究科博士後期課程修了。博士(創造都市)。現代まで受け継がれてきた伝統的な食文化、とりわけ和菓子に注目し、その地域資源としての活用を研究テーマとしている。食文化と地域農業をテーマとした観光振興について日仏比較研究を実施中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かーんたや

2
商業ベースに乗せるのは無理あるから、暇な老人向けに今更と言わずできる範囲で継承してみませんかプロジェクトでもやったら?2019/09/10

ロバパン

1
図書館で借りた本です。和菓子の論文……奥が深い1冊でした。2019/04/04

もけうに

1
非常に興味深く、面白かった。学術的だが、和菓子・郷土史・民俗学・社会学・西欧のテロワールとの関連・日本文化との繋がり、等多方面から論じられており、視野が広がる。文系人間なので、新書のブルーバックスよりこちらの方がずっと読み易く理解も容易。2019/01/28

Kentaro

1
ダイジェスト版からの要約 和菓子作りは職人の手仕事から機械化へ移行した。高度経済成長期には、江戸時代から続く御菓子司と呼ばれた老舗の菓子屋も、企業化し、機械を取り入れた。伝統的に、茶道や神社仏閣などの権威筋とともに発展してきた和菓子は、長崎のカステラ、佐賀県の小城羊羹、鹿児島県の軽羹、長野県小布市の栗菓子などに見られるように、地域の食文化の重要な要素をなしている。更に現在では、外国人観光客などによる上生菓子のインスタグラムへの投稿により和菓子がエキゾチスムを駆り立て、好奇心の対象をなし、活性化している。2018/05/17

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