アインシュタイン、神を語る―宇宙・科学・宗教・平和

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  • サイズ B6判/ページ数 253p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784875023265
  • NDC分類 289.3
  • Cコード C1040

出版社内容情報

■編集者より

◎いつの間にかのアインシュタイン

2000年4月10日の最新刊『アインシュタイン、神を語る』まで300冊余の本が工作舎から刊行されている。その中に1回でもアインシュタインの名前が登場するものを上げるなら、『全宇宙誌』('79)をはじめ、かなりの数にのぼるものと思われる。

アインシュタインの論文が直接収録されているのは『量子の公案』('87)。物理学者の神秘観に注目したケン・ウィルバーの編著であり、「宇宙的宗教感覚」と「科学と宗教」と題されたアインシュタインのニ論文が収められている。

『アインシュタインの部屋』('90)は、かつてのプリンストン高等学術研究所を舞台に繰り広げられる天才科学者たちの日々を追ったもの。そして『二人のアインシュタイン』('95)では、妻ミレヴァ・アインシュタインとの関係が、ミレヴァと同じクロアチア人の著者によって綴られている。

「アインシュタイン」を工作舎の出版路線の一つに位置づけようなどという話は、いつ何時もなかった。ただ、出版のラインナップを考えるプロセスで出会い、選んできた一冊一冊が、じょじょにアインシュタインのいる光景を浮かび上がらせている。ホログラフィーのように。 編集担当としては、これも準備万端ととのえて時期を待ったわけではないが、内心20世紀の最後の年に間に合ってよかったと思っている。


◎有名物理学者と無名の詩人

原題は“Einstein and the Poet”(アインシュタインと詩人)。日本語版のタイトルにも「アインシュタイン」ははずせない。それも、アインシュタインに関する本を検索する人に確実に出会ってほしいので、冒頭に。

社会学者で詩人の著者は、日本では無名に等しい。アインシュタインに比べたらドイツでもアメリカでもそうだろう。詩人ゆえにときどき自作の詩を披露するが、テーマも描写もおよそ科学的ではない。しかし、著者の行動は、編集者として見習うベき点が多々ある。

「光について知っていることは」とアインシュタインに問われて「光は昼間に存在し、夜は闇が......」と詩人は不安げに答える。それでいて、こともあろうにアインシュタインを訪ねているのだから、勇気がある。

詩人の目的は、一点のみにあった。ヒトラーへの対抗勢力となりうるのはアインシュタインをおいて他にないと考えたのだ。その思いが、彼に境界を越えさせていく。ゲシュタポの脅威も、宗教を語るタブーも、国境も越える。

詩人との専門外のやりとりが、意外なアインシュタイン像を提供してくれることは言うまでもない。詩人はしばしば、アインシュタインとの出会いを自分の意思以外の導きとしてユングの「シンクロニシティ」(共時性)を引いて一人納得する。

われわれ出版に携わる者も、読者との出会いにシンクロニシティを感じることがある。決して多いとは言えない発行部数の本が、どこかで誰かに遭遇しているシーンを想像する。実際に、平積みになった新刊書の様子をうかがいに書店に行った折など、手にしている人がいたり、あるいは電車の中で読んでいた人を発見したとき、それは編集者にとって、またこの小さな出版社にとって、大いなるシンクロニシティなのだ。ホットニュースが社内を走り抜ける。


◎「聖なる好奇心」と価値ある「人生」

本のタイトルは、編集部と出版営業部のメンバーによるブレーンストーミングによって決められる。その際にサブタイトルや帯コピーの方向も決まっていく。

社内の、また訳者の合意を得て「神を語る」がふさわしいニュアンスとしてタイトルにおさまった。しかしいったいこの神とは――。本書に特定の「神」は呈示されない。しかし終始、絶対的な「神」の存在が語られている。

ブレストのとき、当社一の科学派の編集長が「聖なる好奇心」のあたりがよいと話した。「聖なる好奇心」とは、本書の最終章の後半で、物理学を目指すも悩める青年に向かってアインシュタインが語りかける言葉の中に現れる。「聖なる好奇心を持ちたまえ」、「人生を生きる価値のあるものにするために」と続く。帯にこのフレーズを選んだ。じつは訳稿に目を通したときや校正のときにも、このあたりにジーンときてはいたのだが、宇宙や光を問題にしている物理学者に「人生」の言葉はそぐわないのではないかという思いから躊躇していた。なぜなのか? きっと気持ちのどこかで、「宇宙」も「人生」も不得手にしているからなのだ。こんなしりごみは、著者ヘルマンス先生を落胆させる。

願わくば、いくつもの「聖なる好奇心」が道標となって、アインシュタインの宇宙に潜む「神」を訪ねはじめられることを。

内容説明

光量子説や相対性理論により、宇宙をニュートン力学から解放した物理学者は、ユダヤ系ドイツ人として、ヒトラー率いるナチに脅かされ、米国亡命を余儀なくされた。20世紀、もっとも広く知られる人物アインシュタイン。その科学精神を支えた信仰とは、そして神とは何だったのか。社会学者であり詩人でもある著者との対話が、アインシュタインのこころを浮かび上がらせる。

目次

対話1 アインシュタインとの出会い(ヒトラーとナチの跳梁下で;最初の対話―1930年3月4日)
対話2 宇宙的宗教(米国亡命と新たな信仰との出会い;2回目の対話―1943年8月)
対話3 アインシュタインの宗教観(またもシンクロニシティの兆し;3回目の対話―1948年9月14日)
対話4 世界平和と科学者の責務(最後の対話―1954年)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

bapaksejahtera

11
1930から4回の面会記録を纏めた本。ユダヤ人同士で、ドイツでの苦労と米国亡命の共通点により間歇して続いた面談は、書簡での交流は殆どなかった事も伺わせる。最初はアインシュタイン宅への客気による押しかけ面会から始まる。その時、偶々その時狂気を含み反感を以て門前に居座る男があり、著者が主人と共に近くの警察に行ってその処置を求めたのが、交際のきっかけとなる。真理を神としその追究を信仰とする天才科学者の思想と、夢想的な詩人の著者の思考から対談は平行線を辿る。アインシュタイン論としては平凡だが興味深い本ではあった。2023/12/14

たまねぎ

1
何気なく手に取った本だが、思いの外感銘を受けた。他者のために何かをすること、直観の大切さ、物事をシンプルに考えるということをアインシュタインは何度も語っている。何かを成し遂げる人ほど、「自分が、自分が」という我執にとらわれず、頭の中で物事を難しくこねくりまわしたりはしないのだなと思った。「自分を輝かせるために頑張る」という考えが好きではないので、彼のような我執にとらわれない生き方に非常に憧れる。2015/11/17

ダージリン

1
小説仕立てのような趣き。アインシュタインとの本当のやりとりなのか分からない面もあるが、アインシュタインの超然としたというか、理想主義的な姿は別格。本質に目を向ける科学者はこのような傾向を持つのかも知れない。"宇宙的"という言葉が頻出するが、この境地に至れる人間はどれだけいることだろうか。2014/06/22

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