内容説明
写真家にできることは、そこに暮らす被曝者の姿、苦しみ、悲しみを映像で伝えること―。17年にわたる現地取材・撮影によって伝える“核汚染”の実態。
目次
ベーリックくんとの出会い
はじめてのカイナール村
ハエが飛ビ交う病室
機密に覆われたチャガン空軍基地
スパイごっこ
地下核実験場と「原子の湖」
ガラス瓶の中の胎児たち
第四診療所の四万を超えるカルテ
厳重監視地域の村
四年ぶりのドロン村
エレオガゼさんの怒り
水爆実験で消えた村
草原の結婚式
お産と停電の話
写真家と科学者
核実験は祖国に対する核戦争だった
著者等紹介
森住卓[モリズミタカシ]
フォトジャーナリスト。1951年神奈川県に生まれる。日本写真家協会(JPS)、日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)会員。1988年、共著『ドキュメント三宅島』(大月書店)で日本ジャーナリスト会議奨励賞を受賞。94年、世界の核実験場の被曝者を取材開始。96年、セミパラチンスクの写真で公募展「視点賞」受賞。99年、『セミパラチンスク草原の民・核汚染の50年』(高文研)で週刊現代「ドキュメント写真大賞」、第5回平和協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、日本ジャーナリスト会議特別賞(2000年)を受賞。2000年、「民族の嘆き―コソボ1999」で「視点」奨励賞。07年、「20年目のチェルノブイリ」で「視点」奨励賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
更紗蝦
5
核実験の目的は、核兵器の性能の確認だけではなく、マイノリティを犠牲にした人体実験も含んでいたことを明らかにした本です。「原子力とは差別そのものである」という小出裕章氏の主張を思い出さずにはいられませんでした。この本に掲載されている写真の一枚一枚に、差別される存在としてのマイノリティの悲しみや苦しみが込められています。核実験の被害者を知れば知る程、核の平和利用などありえないという思いが強くなります。核兵器と原発は別物だと思っている人には、是非とも、こういった本を読んでいただきたいです。 2013/09/18
Machida Hiroshi
2
米中ソが争うように頻繁に行っていた地上・地下・空中核実験。その核実験場の近くには人が住んでいました。今のカザフスタン共和国のセミパラチンスクには、四国がすっかり入るほど広大なソ連の核実験場があり、467回もの核実験が行われ、環境に放出された放射性物質は一説にはチェルノブイリの5,000倍と言われます。ソ連の極秘事項ですから正確な情報は闇の中です。その近くあるいは敷地内でも、カザフ族の放牧民が生活しています。2015/10/09
whatchamacallit
2
いつだって弱いものがツケを払わされる。こんなことを続けていたら、必ず因果が巡ってくると思いたい。2012/03/13