内容説明
なぜ電力会社は原子力発電所を止められないのか、再生可能エネルギーで自給自足は可能なのか、自由化すれば電気料金は下がるのか。東京電力の中・外から見た著者が語る、電力と電力業界の“本当”の話。
目次
序 エネルギー政策の理想と現実
第1部 エネルギーに関する神話(再エネ神話の現実;ドイツ神話の現実;電力会社の思考回路にまつわる神話)
第2部 エネルギーに関する基本(電気はどこでどう作る;エネルギーを語るなら知っておきたい常識;キレイごとでは済まない温暖化問題;東電福島原子力事故による3Eの変化)
第3部 電力システムの今後(考えなければならない問題;原子力事業は誰がどう担うのか;今後電力システムはどうあるべきか)
補論 電力システムと電力会社の体質論
著者等紹介
竹内純子[タケウチスミコ]
NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員、産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会委員、21世紀政策研究所「原子力損害賠償・事業体制検討委員会」副主査。慶応義塾大学法学部法律学科卒業。1994年東京電力入社。2012年より現職。国立公園尾瀬の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員等歴任。その後、地球温暖化国際交渉や環境・エネルギー政策に関与し、国連気候変動枠組条約交渉にも参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
007 kazu
29
生活の根幹をなす電力の問題をわかりやすく解説。知らない人も興味深く読めるが、本書は全面自由化前に出版されていることに留意が必要。エネルギー政策は3E=安定供給、経済性、環境性全てを考慮する必要があるが電力企業の使命は特に「安定供給」であり、一民間企業よりも「稼ぐ」に重点が置かれない。(著者は元東電社員であり電力企業のDNAとしてこのあたりのエピソードは興味深い)それ故、天然資源の少なさに発電設備への過剰な投資が世界と比較し、割高な電気料金となっている。(産業界の省エネ技術も向上するという効果もあった) 2020/11/19
Daisuke Oyamada
15
電力会社に勤めていた著者から見た、 日本の電力事情。 技術的な話。 電力会社の「体質」についての話が非常に興味深い。 経済的に、環境的に現在の状況を維持するには、 所詮無理が多すぎる。 再生可能エネルギーと化石燃料火力発電に頼る現在。 とても危うい状況であることを再認識させられました。 震災後、この様な関連本は多く出たし、 私もたくさん読みましたが、 電力会社側からの積極的な発言を・・・ https://190dai.com/2023/07/05/誤解だらけの電力問題-竹内純子/2023/07/03
メタボン
12
☆☆☆ 一秒でも早く停電を復旧させたいというのが電力社員の習性ということがわかった。原発の必要性についてはあまり言及がなかったのは、元電力社員としては専門分野でなかったということもあるのだろう。電力に関する基本的な事項を確認するには良い書だったが、つっこんだ論説にはなっていなかった。2015/02/15
てつJapan
4
下の方の意見に同感ですが、元東電社員でありつつ中立的に書かれていると思います。この本の内容はかなり逆風の強いのではないかと思いますが、いろいろな方面のデータを使用し意見を述べるこのプレゼン能力はすごいと思います。後書きに触れていた国際交渉の経験のたまものでしょうか。2015/01/25
masa
3
元東京電力社員(尾瀬の自然保護活動担当)による電力活動全般に関する基本書。一般人向けに非常にわかりやすく読みやすく書かれており、データも豊富で勉強になる。安定供給を至上命題とし、リスクをとらない電力業界(人)の体質を解説した部分は、元社員ならではの内容。業界を特別に擁護するわけではなく、客観的な視点で書かれているので抵抗も少ない。具体的な回答には至らないが、問題意識の芽生えになる。2016/05/27