なぜメルケルは「転向」したのか―ドイツ原子力四〇年戦争の真実

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  • サイズ B6判/ページ数 268p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784822248901
  • NDC分類 539.091
  • Cコード C0031

内容説明

2022年12月31日までに原発全廃。福島の原発事故で一気に方向転換したドイツ。その特異なリスク感覚をドイツ在住20年のジャーナリストが解明する。

目次

第1章 甦るチェルノブイリの記憶(「トキオ・イン・アングスト」;甦るチェルノブイリの記憶 ほか)
第2章 ドイツ原子力四〇年戦争(脱原発政策を生んだ緑の党;四〇年に及ぶ原子力論争 ほか)
第3章 フクシマ後のリスク分析(二つの委員会;「ドイツの原発は危険」という指摘はなかった ほか)
第4章 はじめにリスクありき―日独のリスク意識と人生観(世界で最もリスク意識が高い民族;ドイツ人の悲観主義と不安 ほか)

著者等紹介

熊谷徹[クマガイトオル]
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に執筆している。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞。Mixi、Facebook、Twitterでも実名で記事を公開中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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飯田健雄

41
この本は、メルケルが脱原発に踏み切った歴史的経緯を叙述しているけれど、この本に底流に流れるテーマは、ドイツ人の不安(angust)である。ドイツ人の文化は「不安」からなり、悲観的であるということだ。この「不安」こそが、電気料金の高さよりも「不安」をもとに、健康と安全を悲観的に考えて脱原発に向かう。著者が、ハイデガー、カントの哲学の根幹をドイツ国民のエートスに投影していることに驚いた。また、緑の党の台頭、メルケルの政治的センス、財界の政治的影響力の弱さも、ドイツを脱原発に導いていることを知ることができた。2017/08/30

onasu

8
結論のはっきりしない原発政策の我が国と、原発擁護派であった首相が、福島事故後、早々に廃止宣言した独国。  選挙を意識して、という公算があるにしても、前非を潔く改めた姿勢は素晴らしい。何事も白黒決着を付けることを、必ずしも良しとはしませんが、日本版リスクマネジメントとでも言うのか、どちらとも取れる発言の横行には、ほとほと愛想が尽きます。  環境破壊というプライスレスな事項を加味せず、原発の安価性の主張は止めてもらいたいし、チェルノブイリで5年後から発症が増加した、当時子供たちの甲状せん癌も本当に心配です。2012/10/06

まるてぃん

5
東日本大震災後、たったの2ヵ月で、ドイツは国内の原発全廃を決定した。その背景にはいったい何があったのか。ドイツの原発抗争40年の歴史とその国民性から解き明かす。なかでも、リスクを徹底的に回避するドイツの国民性が興味深い。日本で原発を廃止するには、それに伴うデメリットや代替エネルギーをきちんと提案しなければならないだろう。しかも詳細なシミュレーションやデータ分析を添えて。しかしドイツは「原発はリスクが高すぎる」の一言だけで全廃に踏み切った。日本人には絶対に真似できないこの潔さが、時には羨ましく思えてくる。2013/02/25

ろーじゃ

3
メルケルが脱原発に転向した理由として、(1)政治的な変わり身の早さと、(2)技術立国の日本でも事故を防げなかった事に対する自国原発への不安、が挙げられていました。メルケルの話題より、ドイツ国内の原発の問題や、日独でのリスクに対する認識の差異に多くのページを割いていました。 東日本大震災後の、ドイツの対日観や原発への考え方の変化が詳しく書かれ、在独ジャーナリストの著者の強みが存分に発揮されている良書です。2012/10/09

麒麟

3
脱原発に至ったドイツの事情につき、比較的中立的・客観的に記述している。また、過去の脱原子力法とその後の展開など、新聞等では報道されにくい部分もあり、全体に興味深く読むことができた。 表紙イラストがメルケル首相の似顔絵でなければ、もっと早く購入していたと思う。 2012/03/20

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