内容説明
入り組んだラブホテル街、東京に漂う昭和の残り香。文豪、落語家の愛した街はいまデリヘルの聖地に。東京浄化作戦から取り残された街と女たち。ノンフィクション作家が覗いた“幻の花街”の真実。
目次
第1章 陰と陽の街を歩く
第2章 「鴬谷発」韓デリの魔力
第3章 人妻の聖地―鴬谷
第4章 吉原と鴬谷
第5章 鬼門封じと悦楽の地
第6章 秘密は墓場まで
第7章 鴬が谷を渡る
著者等紹介
本橋信宏[モトハシノブヒロ]
1956年4月4日、所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。創造的かつ先鋭的な創作活動をつづける書き手として注目を集めている。ノンフィクション、小説、エッセイ、評論等、幅広く活躍している。著書に、『60年代 郷愁の東京』(主婦の友社・日本図書館協会選定図書)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
100
初めてした夜の仕事が鶯谷だった(安心してください。ただの当直です)。その後そこで週に一度バイトするようになり、鶯谷はしばしば利用する駅になった。高齢の患者さんに「あたしは行灯屋の娘」と言われ、古き良き東京を思った。先輩に仕事の後ご飯食べようと言われ、えー、ジーンズですよと言ったら、構わないからと連れて行かれたのが香味屋だった。思い出深い鶯谷とそこからタクシーで行ける吉原、鶯谷の風俗産業、人妻の不倫を書く。「全裸監督」の本橋さんの筆は闇も光もあり、切なくてとても良い。2020/07/24
きいち
35
旧遊郭のすぐ近所で育ったのにもかかわらず、いやだからこそ、か、風俗の経験がほぼ全くない自分にとっては、こうした、社会派的な残酷物語でも純粋な風俗ルポでもないライトな作りの本はちょうどよかったかもしれない。◇鶯谷の場合、吉原や飛田のようにはっきりと区切られた街なわけではない。そして著者本人のように風俗を利用する人も、この本に何人か登場する風俗で働く人も、外から流れてくる人だ。別にここでなくてはならないわけじゃなく、たまたまここで重なっただけの。そうやって何かの境界として選ばれる場所って何が違うんだろうなあ?2015/02/15
いちろく
27
初鶯谷の思い出。上京したばかりの頃、同じ境遇の友人に誘われてよく都内を散歩した。何処を歩いても個性があり初めて観るものばかりで、楽しかった。外回りで山手線を歩いていた時に通過したのが、鶯谷。独特な風景に驚くと共に、直ぐに引き返せば良かったのに、そのまま歩いたのが運の尽き。迷路のような路地に迷ってしまい、上野方面に抜けるのが大変だった。男二人でうろつくのだから、周りからは滑稽に見えたに違いない(念の為、私も友人も恋愛方面は女性が好き)。今振り返ってみても、ある意味記憶に残ったインパクトのある街なのは事実。2021/08/23
謙信公
24
正岡子規、芥川龍之介や初代林家三平などの文学的風情や寛永寺霊園との生と死の異界、人妻、熟女、韓デリをキーワードに鶯谷にうごめく男女の実情を描く。元ソープの30代後半以降の女性をまとめて熟女デリヘルをやるようになり、人妻は横浜・埼玉に買った住宅のローン返済のため、場所柄、知り合いには出会わないという安心感から熟女・人妻風俗のメッカとなった。現在は大分変わってきており十人十色のようだが、取材では過激派の体験談まで出てきた。関西人には鶯谷といえば「うぐいすだにミュージックホール」。今更ながら、え!?なかったの?2020/10/26
kiyoboo
24
山手線鶯谷駅は他の駅にはないノスタルジーがあると感じていた。上野寛永寺や正岡子規の子規庵、落語家初代林家三平の暮らした家があるが、実際はラブホテルとデリヘリなどの風俗があふれている街で吉原への玄関口という。作者は創造的かつ先鋭的な創作活動を続けているという。文字通り体当たり取材をして風俗の実情などをリポートする。大げさに言えば人生の縮図の街を土地や歴史などきちんと紹介しながらのリポートで風俗もそれほど過激でなく楽しく読めた。2014/12/29