内容説明
小説、演劇、映画、漫画からゲームの中に現れる記憶喪失。十九世紀における登場から現代まで、虚構の中の記憶喪失モチーフの展開と機能を扱った、斬新なフィクション論の誕生。
目次
第1章 モチーフの誕生(二十世紀以前;戦争と記憶喪失;ピランデルロ・シンドローム;大衆文化におけるモチーフ)
第2章 モチーフの発展(繰り返される戦争とモチーフ;繰り返される戦争とモチーフ―スパイ小説と記憶喪失;帰還兵とフィルム・ノワール;サイコスリラーと記憶喪失)
第3章 現代におけるモチーフの展開(フィリップ・K.ディックの衝撃;ゲーム化する想像力とモチーフ;日本におけるモチーフの展開―戦後史の欠落と健忘;日本におけるモチーフの展開―ジュブナイル的想像力と記憶喪失)
第4章 機能的考察(記憶喪失が生み出す物語―リプレイと放浪;記憶喪失が生み出す物語―演技とコメディー;記憶喪失が生み出す物語―アナザー・ワールド(もう一つの世界)
記憶喪失が生み出す物語―生の親密さと記憶)
著者等紹介
小田中章浩[オダナカアキヒロ]
1958年生。大阪市立大学大学院文学研究科(表現文化学専修)教授。博士(文学)。専門分野:現代フランス演劇を中心とするモダンドラマの研究、表象文化論。著書:『現代演劇の地層―フランス不条理劇生成の基盤を探る』(ぺりかん社、2010年。2011年度日本演劇学会河竹賞受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
27
映画・小説など、創作に現れる「記憶喪失」について、作品の紹介とともに、その扱われ方の歴史的変化をみていく。バルザックからハルヒまで、範囲は手広い。「時をかける少女」も出てくる。創作は今後さらにゲーム化・参加型に変わるだろうという予想はうなずける。図書館では、医学書に誤分類されていたので、現実の症例との関連・違いについて述べられていない点、少し期待とは違った。2016/08/16
有理数
17
文学、戯曲、漫画、ゲーム、ドラマ、アニメ等、古今東西のあらゆるフィクションから「記憶喪失」が題材とされたものを集め、それらがどのように作中で扱われているか、を集成した一冊。巻末リストで挙げられている作品数の膨大さ。読書ガイドとしても役に立ちそう。「どのように扱われているか」なので、基本的にはフィクションにおける記憶喪失をカテゴライズし、その代表例をあらすじを含め述べていく、というスタイルなので、分析・考察をもう少し詳しく! という気持ちがないではありません。が、非常に楽しく読みました。2018/01/30
Zaedno
5
記憶喪失周辺に特化して欧米文学・映画から日本のラノベ・アニメ・ゲームシナリオまで。いやあ、ホントによく網羅されている。読書案内としても役立つと思う。フィクションにおける記憶喪失の意味、役割についての分析は興味深い示唆は数々あるものの、ちょっと食い足りないかも。もっと読みたいもっと!2015/11/29
ひじき
1
テーマが面白かったので読んだのだけれど、作品例を盛り込みすぎて単なるガイドブックになりかかっていてちょっと残念。巻末にせっかく作品一覧があるので、本文ではもっとテーマ自体のことを掘り下げてもよかったのにな、と思った。わたしが読み込めてないだけかもしれないけど…2014/06/07
Amano Ryota
1
本書は、現実の記憶喪失ではなく、フィクションの中において、記憶喪失がどのように扱われてきたのかを考察する書籍。物語に直接関係のない、ギミックとしての”記憶喪失”と、記憶喪失を主題にした物語の2種類があるという考察は、成る程確かにと納得。そして、ギミックとしての記憶喪失は、記憶が失われた原因の究明よりも、記憶が回復すること自体に読者の満足があり、それが象徴しているのは、一度死んで生き返るという遊びなのだという、この見方は面白い。紹介されている本も多いので、タイトルにピンときた方にはオススメです。2014/04/14