内容説明
折口信夫の生誕一三〇年を記念して復刊する本書は、昭和二十二年から二十八年九月の逝去まで、折口の晩年七年間を共に生活した著者による追憶の書である。折口信夫の生きる姿をまざまざと写し出すその鮮烈な印象は二一世紀の現在もいささかも古びることがない。十七年間を共に暮らし、出征後に養子となった春洋が硫黄島で戦没し、深い悲しみを湛えた折口の率直な「死生観」や師・柳田国男に対する礼のありよう、若き日に常用したコカインの影響で利かなくなった臭覚、代々医を業としていた生家の影響で自ら調合する薬など、日常生活を生き生きと描いた記録としても類がなく、折口信夫に全人的な薫陶を受けた若き日の岡野弘彦の思いがほとばしっている本書は、「折口学」入門に欠かせないものである。
著者等紹介
岡野弘彦[オカノヒロヒコ]
1924年、三重県生れ。歌人。日本芸術院会員、文化功労者、国学院大学名誉教授。国学院大学国文科卒業。昭和22年から28年9月の逝去まで、折口信夫と生活を共にして世話をする。「折口信夫全集」「折口信夫全集ノート編」の編集に参加(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
28
長野県との関りでは、1950年の11月には、信州洗馬村の長興寺に泊って、東筑摩郡教育会西南支部のために、3日間「源氏物語」の講義をされた折口先生(154頁)。 なんとなくいつも怒ってそうな折口先生のお姿が想像できる。私に近いパーソナリティなのだろう。先を見越しての怒り(165頁)などは、これからの被曝の健康被害、生命の破壊に通じるものがあるかもしれない。 2018/03/02
私的読書メモ3328
2
文学史的に、また学術的にも非常に貴重な記録でしょう。学問・短歌のどちらについても、期待していたその仕事ぶり、方法についての記述はほとんどなかったので、そこは少し残念でした。それにしても、私からするとたった祖父の代の昔ですが「師弟」という関係について、途轍もない隔世の感があり、そこに世の無常と、過ぎ去ったものへの寂寞の念を呼び起こされずにはいられませんでした。2017/12/30
1131you
0
面白い部分と退屈な部分の差が顕著だった。作者や折口信夫の人柄が表れてる部分は面白いけど第三者との交流はいまひとつ(主に知識不足でその人が誰かよくわからないから)2022/09/03