内容説明
ものたちの語る声に耳をすませば、ヴィクトリア朝時代の喧騒が聞こえてくる―手のひらにおさまる豆本、道具のつまった裁縫箱、使い込まれた小さな机。シャーロット、エミリー、アン。作家を見守り、励ましたもうひとりの主役の物語。
目次
第1章 小さな本
第2章 ジャゴイモをおむぎ
第3章 歩く
第4章 キーパー、グラスパー、一家と暮らすその他の動物
第5章 儚い手紙
第6章 机の魔法
第7章 死が作った物
第8章 記憶のアルバム
第9章 渡り行く遺物
著者等紹介
ラッツ,デボラ[ラッツ,デボラ] [Lutz,Deborah]
コロラド大学ボルダー校卒業、ニューヨーク市立大学大学院センター修了。ヴィクトリア朝時代の文学が専門。現在、ロングアイランド大学准教授
松尾恭子[マツオキョウコ]
1973年、熊本県生まれ。フェリス女学院大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
66
母の死、精霊、そして創作。時代の求める女性像と時に対峙する創作欲。針仕事は両者の”妥協点”でもある。三者三様の性格、生き様は作風にも反映。(誤解を恐れず言えば)三姉妹の特徴は、シャーロットが愛、エミリーが自然、そしてアンが現実。生き様ではシャーロット、作品では「ゴンダル国の物語」が印象的。情熱と幻想。一方、時代とは言え、短命故に失われた創作機会が惜しい。巻頭の写真も故人を偲ばせる。”机箱”かぁ、以前大英博物館に行った時には意識しなかった。次回英国を訪れる楽しみが増えたと考えよう。2017/05/01
mizuki
42
装丁が素敵だったので手に取りましたが、ブロンテ三姉妹の作品を読んだことのない私には少々読みにくさを感じました。それでも、三姉妹の本に対する愛情と、子どもの頃から作品を作ることを楽しむ姿がなんとも微笑ましくて良かったです。各章で挿入された姉妹の本からの引用は、私の心を惹きつけるものばかりでした。きっと、著書との相性が良くなかったのだと思います。掲載された遺品の素晴らしさは、古物を大切にする彼女たちを表しているようでもありました。郵便配達の制度や手紙のやり取りのお話が面白かったです♩2017/05/20
星落秋風五丈原
38
ブロンテ三姉妹が使っていたもの、飼っていたペットなど生活様式と彼女達の作品にどう反映されていたかを描くわりと硬目の文章のエッセイ。荒野大好きのエミリー、不運なアン、ただ一人生き残って結婚もしたシャーロットのまさかの過去にびっくり。2017/01/29
アヴォカド
12
約200年も前の姉妹たちの会話が聞こえてくるようだ。持ち主がこの世を去った後も残る「物」には、やはり持ち主の体温や情念のようなものが宿るのかもれしない。裁縫箱、豆本、手紙、ドレス…その人が大切にした物は、まるでその人自身のようだ。妻を亡くし6人もいた子どもたちにも先立たれた父パトリックにも、思いを馳せずにはおれない。荒野が好きで、自己完結していたというエミリーの、たった30年の儚い人生から湧き出た「嵐が丘」の激しさよ。荒野を歩くエミリーの姿が見えてくる。2017/02/01
su-zu
8
ブロンテ姉妹の遺品を切り口に、彼女たちの作品を深く読んだり、新たな解釈を提示しいる。ブロンテ姉妹の生きた時代、まだ物は持ち主との結び付きが強くて、物から伝わる持ち主の気配はとても濃い。自分で作ったり、直したりした物、常に肌身離さず持っていた物を、実際に手にした著者が、繊細にその気配を写し取っていて、牧師館や荒野の空気も伝えている。嵐が丘やジェーンエアを読み返したくなった。2017/03/13