出版社内容情報
中世、権力の中枢だった相模国の武士団の興亡を、源平の争乱や南北朝の動乱に射程を据え描く。古戦場・街道などを訪ねて実像に迫る。
内容説明
武家の都「鎌倉」を有し、中世における権力の中枢を擁した相模国。その地域に根ざした武士団の戦国にいたるまでの歴史を追う。源平の争乱や南北朝の動乱に射程を据え、『平家物語』や『太平記』の時代を生きた彼らの興亡を、考古学などフィールドワークの成果も踏まえて描く。古戦場・街道・館など、武士団の活躍した舞台を訪ね、地勢的性格を問う。
目次
序 相模武士団への招待―そのあらましを探る
1 源平の争乱と相模武士―『平家物語』の世界
2 南北朝動乱と相模武士―『太平記』の世界
3 相模武士団のその後
4 特論・相模武士の群像
5 相模武士を歩く
著者等紹介
関幸彦[セキユキヒコ]
1952年北海道に生まれる。1985年学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻後期博士課程満期退学。現在、日本大学文理学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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六点
43
つい最近、井沢元彦が菱電グループ企業の社内報に坂東武士が全て開発領主であったかのようにエッセイで書いていたが、随分古臭いこと書いているなあと思ったのだが、最新の研究を集成したこの論集で、そんな古臭い認識は打破される。高橋論文の「河内源氏や良文流平氏、秀郷流藤原氏に収束させる思考」の枠組みに囚われぬ思考はそのような古臭い武士団像の延命を阻むであろう。伊藤論文の墨書木簡に描かれる迷信深く、饗応に励む武士像は何とも世知辛くて実に良かった。中世史好きには応えられん本である。2017/10/31
獺祭魚の食客@鯨鯢
17
勇猛果敢なサムライ相模武士は、司馬遼太郎氏から「名こそ惜しけれ」という日本人の特性を体現する集団と謳われた坂東武士の一翼を担いました。武蔵武士には熊谷次郎直実という都の貴族から怖れられた人物もいます。彼らは粗暴な人間たちと蔑みの目で見られがちですが、その後江戸時代が終わる900年もの間この国の秩序維持の役割を果たすことになります。関東人として生まれた私は、関西人とものの見方にギャップを感じますが、相模武蔵の国に住む人間の気風は武士の気概を受け継いでいると思っています。2017/12/03
bapaksejahtera
14
姉妹編「武蔵武士団」と体裁や構成は同じ。前半に中世武士団の生成史、後に主要氏族の紹介と歴史探訪が配置される。「武蔵・」の改訂版の趣があり、隣接する両国を舞台に同様のテーマが記述され、復習のような気分になる。読んで了解されるのが相模国の地勢的重要性。広大な武蔵国は22郡を擁するが中心は秩父や埼玉に偏る。これに比し相模は地誌的に極めて密である。武士団は歴史的に多く本書でも描ききれないとする程であるが、結局は外縁から出た北条や後北条の勢力により根生の武士団は駆逐される。相模に馴染みの薄い読者には把握しづらい。2022/03/14
onepei
4
相模の武士あるある「北条もしくは後北条に絡まれる」を感じた。2017/09/19
吃逆堂
3
所収論文はいちおう中世の全時代にわたっているが、コラムからわかるとおり中世初期偏重。個別の論文はおもしろいのに、そのことが本書の価値を減じさせているように思われる。2019/07/05