内容説明
雪が舞う帝都を震撼させた二・二六事件。蹶起した青年将校たちの“昭和維新”はなぜ失敗し、彼らは敗者とされたのか。計画から実行・鎮圧、後世の影響までを克明に再現。近代日本史上最大のクーデター事件の真実に迫る。
目次
クーデターの「真実」―プロローグ
1 昭和維新運動(北一輝と猶存社;青年将校運動の開始;桜会結成から五・一五事件まで)
2 昭和陸軍の形成(「下剋上」の時代;皇道派と統制派の対立)
3 クーデター計画の実像(青年将校の人物像;直接的動因とクーデター謀議の開始;クーデター計画の構築;クーデター計画と天皇観)
4 二・二六事件の勃発と展開(襲撃と占拠;暫定内閣をめぐる攻防;石原莞爾の動き;二十七日の情勢;流血か大詔か―香椎戒厳司令官の上奏案;自決か抗戦か)
5 二・二六事件の終焉(鎮圧;軍法会議)
二・二六事件をめぐる論点―エピローグ
著者等紹介
筒井清忠[ツツイキヨタダ]
1948年大分県に生まれる。1977年京都大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。1988年文学博士(京都大学)。1994年京都大学文学部教授。現在、帝京大学文学部教授、東京財団上席研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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厩戸皇子そっくりおじさん・寺
63
今、一番新しくコンパクトに二・二六事件がわかる本はこれではあるまいか。本当にわかりやすかった。本書出版後、NHKの番組で新史料が発表されたら、著者は二刷で改訂したという。学者さんの良いフットワークがある。やたらに陰謀だと取り沙汰される二・二六事件だが、それらは松本清張さんのいつもの陰謀論によるものだったりする。「昭和維新」というのは、幕末からまだ数十年しか経っていない時代で、テロルやクーデターがまだ時代を動かせた頃の思想なのだ。私は三島由紀夫の自決までは幕末と地続きだったのだと思っている。お薦め、良書。2021/06/01
南北
47
以前、中公新書で読んだ二・二六事件の本より納得できる内容だった。敗者の日本史なので反乱軍側に共感しているような点も見られたが、もう少し前提となるところから解説してもらった方がさらにわかりやすくなったと思う。個人個人でそれぞれ影響度は異なるものの、日本軍が共産主義の影響を受けていたのではないか、そうした人たちの中にテロに走る人たちが出てきたのではないかと思う。最後の章で共産主義の影響は官僚にも及び、いわゆる「革新官僚」と呼ばれたと述べられているが、そうした影響への対抗から現人神の概念が作られたのだと思う、2023/07/21
かんがく
11
正確な史料読解による俗説の排除を心がけているからか、淡々とした記述であまり面白くは読めなかった。青年将校の中に改造派と天皇派があったこと、事件後に石原派が大きな力を持ったことなどを指摘。2020/10/21
keint
11
二・二六事件を青年将校側から説明している。様々な資料や先行研究を用いて俗説を批判し、事件の真相に即した解説であった。初めて二・二六事件関連の書籍を読むならばまずはこの一冊を推奨する。巻末の二・二六事件研究史(という名の二・二六事件関連書籍類の解説)は他の文献に当たる際にその文献で注意すべき点もわかるため、大いに参考になる。2020/02/20
MUNEKAZ
10
二・二六事件の概説書。決起した青年将校たちのプロフィールや精神的支柱となった北一輝の思想、複雑な反乱の内幕から密室の裁判に至るまで、史料をもとに手堅く纏めてある。政治参加を禁じられている軍人故に、クーデターという方法でしか、政治的意見の表明が出来なかったとする見方は興味深いところ。また事件の首謀者とされた北一輝、西田税に対する結論ありきの強引な裁判は驚かされる。ファナティックな軍国主義者というよりは、素朴で感じやすいエリートたちが起こした事件という印象。2020/04/21