出版社内容情報
ペリー来航から十年、洋式海軍が組織され、幕府権力の回復を目指す将軍家(いえ)茂(もち)は蒸気船で上洛した。武士たちはいかに西洋の新技術を導入したのか。蒸気船の普及、長崎海軍伝習所・軍艦奉行の設置、浦賀の軍港化や地域社会との関係を描き、海軍の実態を解明。急速な軍事技術の発達と幕長戦争・戊辰戦争の展開をたどり、明治維新のメカニズムに迫る。
内容説明
ペリー来航から十年、洋式海軍が組織され、将軍家茂は蒸気船で上洛した。西洋の新技術はいかに導入されたのか。蒸気船の普及、海軍教育、軍港の成立から戊辰戦争の展開までをたどり、明治維新のメカニズムに迫る。
目次
明治維新と幕末海軍―プロローグ
幕府海軍誕生への道(ペリー来航;軍艦国産事業の展開;長崎海軍伝習所から築地軍艦操練所へ;「咸臨」の渡米)
幕府海軍誕生と将軍上洛(幕府海軍起動;将軍徳川家茂の海路上洛計画と海軍強化;将軍来航;諸藩海軍の勃興)
蒸気船の普及と軍港の形成(蒸気船を買う;浦賀の軍港化;紆余曲折の製鉄所建設計画)
内戦下の海軍(幕長戦争における海軍の激突;戊辰戦争と榎本艦隊;新政府艦隊の反攻)
幕府海軍の航跡―エピローグ
著者等紹介
神谷大介[カミヤダイスケ]
1975年静岡県に生まれる。2011年東海大学大学院文学研究科史学専攻博士課程後期修了。東海大学文学部非常勤講師、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
6
幕末の幕府海軍に迫った一冊。人材育成、蒸気船の調達のほかにも横須賀や浦賀に代表される軍港の建設や燃料となる石炭の確保など、様々な面から幕府海軍の創設と発展を紹介している。興味深いのはペリー来航に対応した浦賀奉行所が、以後も幕府の海軍整備の中核として機能し、その人脈は帝国海軍まで続いていたという点。また幕臣や藩士の区別なく人材を集め、徳川幕府の新しい象徴となるはずだった海軍だけに、初めてその真価を発揮する機会となったのが、戊辰戦争という内戦だったのはなんとも皮肉に思える。2017/12/23
onepei
3
幕府海軍は戊辰戦争で壊滅的打撃。それを考えると明治の海軍はソフトもハードも急に整備されたということか。2018/01/30
dahatake
0
幕末期における蒸気船が当時の人たちにとってどういう存在かを感じ取ることが出来る情報量だった。見方が変わった。 今でいうとGPT-4の様な最新の道具であり、坂本龍馬の様にそれで新しい事ができると思う人が先入観の少ない若者に出てくるのは必然だと思う。 藩で大型船の建造が禁止されたので、各藩が必死に追随している。 ちゃんと向き合って組織を作っている当時の幕府。幕府から地理的に遠いが故に浦賀に軍艦操練所を移された長崎。ただ殆どの知識人・技術者は長崎操練所出身。それらが明治政府に海軍の資産として引き継がれていく。2022/03/27
wuhujiang
0
幕府海軍発足から榎本海軍の終焉までをえがく。 活動期間が短かったこと、長州戦争や戊辰戦争であまり活躍しなかったことからいまいち評価さえされない幕府海軍だが、大船すらないところから諸外国技術の導入に人員の育成と、相当の努力がはらわれたことがわかる。 封建制政府転覆があったにしては、諸国と比べて大きな騒乱にならなかったといわれる明治維新だが、 海軍のみに限って言えば諸外国から購入した艦船の喪失・長崎海軍伝習所以来知識・経験を積んだ士官の喪失を考えれば失ったものは大きいと感じた。