内容説明
かつて民衆が自らを「御百姓」と誇りをもって主帳した時代があった。記億の彼方に志れ去られようとしている百姓の土地観念、人との関わりや自由の歴史構造をキーワードに、今も私たちを規制する思考や行動の原点を探る
目次
近世百姓とは―プロローグ
人と土地―質地請戻し慣行
人と人のきずな―頼み証文
公と私と共―迷惑・我儘・私欲
百姓の「自由」―訴と村方騒動・百姓一揆
百姓世界の解体と現代―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
4
百姓というと重い年貢に泣き、侍達の無理難題に苦しむ民というイメージだが、この本は後世に残る土地相続や売買、年貢減免や苦情申立の文書から、自ら百姓と名乗るようになった農民達の生活を探っている。そこには差し押さえられた土地でも「先祖伝来のもの」だから取り返す、無理な借金の取り立ては「人倫にもとる」ので踏み倒す、皆の願いを聞かない名主や代官は「天命に背いている」ので処罰する、近代資本主義とは全く違う価値観で行動するしたたかな人達がいた。武士側も生産を担う「天下の元」である百姓を粗略には扱えなかったのが実像らしい2012/01/14