出版社内容情報
月夜、音吉が担いできた鮟鱇の腹の中から美女が現れ出でる。泉鏡花の怪異譚を山村浩二のイラストで活写した新・絵草紙。
内容説明
「私を一所に連れておいで。」月夜、大きな鮟鱇を運んでいた吉と音吉の二人。なぜか鮟鱇の肝は、美女に化けてしまう。泉鏡花の怪異譚を山村浩二のイラストで活写した、奇妙で滑稽な新しい絵草紙の誕生!
著者等紹介
泉鏡花[イズミキョウカ] [Kabat,Adam]
1873(明治6)年~1939(昭和14)年。本名・泉鏡太郎。江戸文芸の影響を受けつつ、明治・大正・昭和にわたり活躍した小説家。近代幻想文学の先駆者
山村浩二[ヤマムラコウジ]
1964年、名古屋市生まれ。アニメーション作家・絵本作家。映画芸術科学アカデミー会員、東京藝術大学教授。『頭山』がアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネート
カバット,アダム[カバット,アダム]
1954年、アメリカ合衆国ニューヨーク市生まれ。武蔵大学教授。専攻は近世・近代日本文学(幻想文学)。独自の視点で江戸の妖怪・化け物を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
80
逗子から横浜へある月夜に向かう音吉の道中のお話し。鏡花はこの話を書く4年前の1902年逗子に療養していたらしいです。鮟鱇のふくれた腹は近松の浄瑠璃「奥州安達原」を連想させる。絵入りの物語も、その後の原文も味がある文章と内容。鮟鱇の口から現れた美女の表現が鏡花らしく独特。「雪の乳房の漏れたと見ゆる」「丹花の朱唇愛しく」「月夜に燃ゆる緋縮緬」月夜に出会う謎の美女には気をつけましょう。鮟鱇の口から生まれた夜叉かもしれません。主公様のように足が棒のようになり、家が火事になっても知りません。2020/09/12
えみ
49
美麗な筆致によって強調される妖しさ。物語が佳境に入る直前からゾクッと肌が粟立つ。月の魔力から照らし出される妖光によって、幻想スパイラルに導かれた読者はとっておき奇妙な美女に出会う。あんこう…何とあんこうの腹から出現した美女…。これだけ聞いて、どんな話か想像できる人がいるだろうか?奇抜で妖艶な物語に意味を持たせることができるなんて、もう何度称賛したか分からないが、さすがは泉鏡花だ。出現はさておき、その穏やかな性格から老いた政治家に可愛がられていた彼女。しかしその正体に警鐘、警鐘、警鐘。危険に月が降りてくる。2024/01/24
まさ
30
絵草紙版の月夜遊女。おどろおどろしい世界だと感じていたのだけど、挿絵が入ると違って見える。山村浩二さんの絵だからか、滑稽さが表れてきました。それでもやはり、よくよく読むと妖艶な作品なのだなぁ。2020/07/24
chatnoir
15
文章のセリフが訛ってて、中途半端に古くて、巻末の原文と同じくらい読みにくい。絵も、滑稽な内容に合わせたのかな...妖艶な美女を期待したけど、絵柄が好みではない。贅沢な仕様の本だけど、好みじゃなかった。アンコウが、ではなくアンコウの肝が化ける美女...コンセプトには惹かれるんだけどなぁ。2017/12/10
いぼいのしし
11
泉鏡花は名前くらいしか知らず、初めて読んだ。結構読みづらく挿絵と解説に助けられて読了。読み易く工夫してあるみたいだけれど、原文のままがかえってよいのではないかと思ってしまった。2018/07/16